15年間のワークショップ体験から感じた対面とリモートの違い~リモートでワークショップやイベントを大成功させるための秘訣第2回
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リモート化が急速に進みつつある中、日々のコミュニケーションや仕事だけでなく、アイデア出し・議論などのワークショップ等を行う場合にも、リモート化せざるを得ないケースが増えています。
本ウェビナーでは、リモートで様々なイベント・ワークショップを実施している方々をお招きし、具体的なケース・事例を紹介いただくことで、「リモートでイベントやワークショップを企画・進行するためのテクニック」を存分にお伝えします。)
プレゼンの動画&記事
1.15年間のワークショップ体験から感じた 対面とリモートの違い
2.しくじりから学ぶ!初めてのオンラインイベントを成功させるコツ
2020年6月12日に開催した「リモートでイベントやワークショップを企画・進行するためのテクニック」のうち公開可能な1人目のプレゼンテーションです。
本ウェビナーでは「15年間のワークショップ体験から感じた 対面とリモートの違い」と題し、オンライン環境下で実施する新しいワークショップの方式について運営面での課題点や解決のための取り組み方についてお伺いしました。
登壇者紹介

相内 洋輔 氏
リクルート(株)、(公財)東日本大震災復興支援財団を経て、2018年にワークショップデザイナーとして独立。人が自分の意図に沿って自由に前進できる世界の実現を目指して、自己探究の機会を提供している。(株)Pallet、 Slow Innovation (株) ワークショップデザイナー / 青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム修了 / LEGO® SERIOUS PLAY® 認定ファシリテーター相打さんのWebサイト:http://workshop-design44.com/
【i バラエティーの司会者 から ラジオのパーソナリティ へ】
今日はリモートワークショップの運営を重ねて「ぼくの意識がどう変わったか」を中心にお話させていただきます。
ワークショップをやるとしても、対面の場合とオンラインの場合では勝手が大きく違います。対面でのファシリテーションの場合だと全員の表情や仕草が読み取れるわけです。反応や進捗を見ながらトーンやテンポを調整が容易にできます。
でもリモートワークショップの場合は参加者の反応がまるで分かりません。画面オフの人もいるし、25名までしか1画面に映らない。
➡スライド:確認の増加
それで参加者に「ワークの内容分かってるかな?」と執拗に確認してしまうような事態になってしまいました。そうするとワークの流れがどんどん悪くなっていって、ワークとワークがうまくつながらないことが起こりました。
すると参加者に何が起きるかというと、没入感がどんどん削がれて行って「飽きちゃう」とか「つまんないかも」とかいう空気感が出てきてしまいます。そういったことが1回目のリモートワークショップで起こったんです。
➡スライド:バラエティー番組の司会からラジオのパーソナリティへ
僕自身、対面では参加者の状況を見ながら、いろいろな話を振って場を作っていくバラエティの司会みたいな立ち位置でファシリテーションをしていることが多かったんですけど、オンラインでやるにつれて意識を変えました。
具体的にはラジオのパーソナリティですね。
「自分のリズムで話し続ける」
「できる範囲で参加者と関わっていく」
ということが、すごく円滑に進める上で大事だなという風に感じています。
【ii スタープレイヤーの大活躍 から ONE TEAMでの協同 へ】
運営体制に関することなんですが、対面でワークショップを実施する場合100人までなら自分一人でも運営できるかなと僕個人は思っています。
➡スライド:リモートワークショップ中に必ず起こること
でもリモートワークショップをやっていると、こんなことが必ず起きると気づきました。
「Zoomに入れません」
「音聞こえません」
「スライド消しちゃいました」
いろんなトラブルが起きました。
ファシリテーションをしながら一人で対応すると絶対無理なんですよ。どうしてもワーク進行が止まってしまう。
「一人ではかなり厳しいな」という感覚があるのと、これは僕自身の感覚なんですけれども、オンラインでは誰かひとりの声が聞こえ続けるよりもいろいろな人の声が聞こえた方が、
「参加者の集中力が高まる」
「リラックスしてその場にいられる」
そういった現象が起こりがちだなと思っています。
➡スライド:主に1人でなんでもやる
これまでの僕はフリーランスとしてほとんど一人でワークショップを運営していたんですけど、リモートワークショップをやる場合、ファシリテーションとかチャット対応とかZoomとか完全分業にせずにいろいろな人がいろいろな役割をこなしながら一つのチームでやっていくのがすごく重要だなと感じています。
【iii 足場をかけるお手伝い から 灯台の設置 へ】
僕がワークショップをする際に大切にしていることは、ひとりひとりの進捗状況に合わせて丁寧に介入していくということなんですね。
間違ったら修正していくのはもちろんですし、悩んでいる方には適切な助言をしたいと思いますし、早く終わったらさらに先へ進めるような問いかけをしたりですとか、場によって内容を変更していくようなことをしています。
➡スライド:ヴィゴツキー 発達の最近接領域
背景としては僕自身「ヴィゴツキー 発達の最近接領域」がすごく好きで、支援者がいればできる領域というところをワークショップでは作っていきたいなと思っているので、丁寧に介入しながら足場をかけていくことによって、ひとりではできない領域まで到達するというところを意識していました。
ですが、リモートワークショップをやっていますとワークの指示をしたときに画面がこのように切り替わるんですね。
➡スライド:個人作業中のPC画面
司会の僕以外は、
・内省に集中するために画面をオフにする人
・画面をオフにしてアイコンだけ映っている人
・顔が半分だけ映っている人
・パソコンから離れて違う場所で参加する人
などがたくさん現れます。
そうすると個々人が今どんな状況に置かれているのか全く分からないので、丁寧に介入したいと思ってもしようがないんですね。リモートワークショップでは迷子が生まれやすいと感じています。
視覚と聴覚でしか情報を得られないので情報が限定される所とか、家族から呼びかけられたり、携帯に通知が入るなどして集中力が切れやすい所とか、対面であれば周りを見渡せば他の人が何をしているか分かるのですが、オンラインではそれができない。
あとは質問がしづらい空気感があると思っています。
➡スライド:参加者の状況をつぶさに観察、進捗に合った介入を行う
こんな状況ですので、僕自身は丁寧に介在していくということをワークショップで大切にしてきたんですけど、参加者の状況をつぶさに観察して足場をかけるのではなく、みなさんが迷わない目印、灯台をちゃんと設置して、そこに向うための方法やスピード感は個々人にある程度ゆだねる方法を取りました。
対面だったら問いだけバーンと出して「みなさんやってくださいね」ということもあるんですけれども、リモートの場合は視覚的に確認可能なフレームを提示することが大事だと思っていまして、なるべく迷子にならないように意識しています。
たとえば指示を出した後に、Googleスライドでワークシートを共有させてもらって、思ったことを書き込んでいけばワークが完成するような流れにしたりですとか、スペチャを使ったときは自分がどの空間で何の話をしているのかちゃんとその空間で分かるようにテーマやエリアを明示してあげることを通じて、時間が余ったとか、何したらいいかわからないなというときも画面に映っているものを見ていくと全部わかる仕掛けを作ることがすごく大事だなと思っています。
【Ⅳ 存在による触発 から キラーワードによる触発 へ】
僕自身ワークショップを作るときって「こんな場が生まれるといいな」ということをいつも意識していまして、お互いの気づきを共有しあうことによってお互いに触発が生まれあうということがすごく大事だなと思っています。
➡スライド:触発を生むワークショップを実施するために基本としているステップ
お互いに触発を生むためにどんなことを対面のワークショップで基本としているかですが、自分のことを自由に持ち出していい、何でも言っていい、否定されないという安心安全感を作ることを意識しています。
そこから自分自身が普段持っている価値観の枠組みとか、思い込みみたいなものに気づき、その上で新たな思考を作っていく、あるいは新たな行動を生み出していくことを意識しています。
そこで得た発見や感動をみんなに共有してもらうことで場全体が深まっていくし、新たな学びを得ることを意識しています。
➡スライド:対面のワークショップにおいて触発が生まれる時
特に対面のワークショップにおいて触発が生まれるときなんですが「こんなことを発見したんですよ」という躍動感や、今までモヤモヤしていたものがスッと取れてクリアになった感覚、ふいに流れてくるような涙や、本当にうれしかったんだっていう震えるような感動など、そういうものを対面でみんなの前でシェアしてもらうことによって場が深まっていくと思っているんです。
言葉以外のコミュニケーションってオンラインでも伝わらないことはないんですが、どうしても対面と比べると薄まってしまうなという風に感じています。
リモートワークショップを何回か行っていて、どうやって触発が生まれるか考えていたんですけど、ひとつ私の中で答えかなと思っているものがあってですね。みんなが納得するような象徴的なワードが生まれた瞬間が、リモートワークショップにおいてはすごく盛り上がったり、場が深まるなと感じています。
➡スライド:感じたことを『言葉に戻す』時間を意図的にデザインする
例えばなんですけど、議論を包括するようなキャッチコピーが生まれたとか、新しく魅力的な概念が生まれるみたいなことが起こると、
「私も試してみたいな」
「それいいな」
など人の心が動いていくことが起こるなと思っています。
なので感じたことを言語化する・言葉に戻すということについて、リモートワークショップにおいては意図的にデザインしていくということを僕は行っていて、それによって対面での感動感とかクリア感とか伝わらなくても場に触発を起こしていくんだと意識をしてやっています。
➡スライド:存在による触発からキラーワードによる触発へ
なので参加者が自分のピュアな気持ちを持ち出してお互いの心が動くという対面での触発から、象徴的な言葉によってみんなの心が動いていくというデザインを意識してやっています。
【まとめとこれから】
まとめさせていただきたいなと思いますが、僕のリモートワークショップに参加してくれた人たちの声はこんな感じでした。
➡スライド:リモートワークショップに参加してくれた人たちの声
これをまとめると「参加ハードルが対面より低いんじゃないかな」ということが特徴だなと思っていますし、家から参加する人がすごく多いので最初から一定の安心感がある。緊張があまりないなと感じています。
今リモートワークショップに参加してくださる方はすごく積極的な方が多くて、
「まだどんな効果があるかわからない」
「良いものかどうか分からない」のに
行ってみようと思う方が多いので、すごく意欲が高いなという風に思っています。
リモートワークショップは対面でやるよりは大変なんですけど、参加者の貴重な自己内省の機会となっていると思いますし、デザインを作っていけば十分に相互の触発を起こせるんじゃないかなと、手ごたえを感じています。
家にいながら良質な自己内省が生まれる機会にアクセスできるのは僕は「全人類において大チャンスじゃないかな」と感じていまして、
「家から良質なワークショップに参加できるのが当たり前の世界になっていけばいいな」
「それを作って行きたいな」
と思っています。
「リモートでワークショップやイベントを大成功させるための秘訣第2回」のプレゼン一覧
1.15年間のワークショップ体験から感じた 対面とリモートの違い
2.しくじりから学ぶ!初めてのオンラインイベントを成功させるコツ
ご質問等がございましたら、お手数ですが下記運営事務局までご連絡のほどよろしくお願いいたします。
メールアドレス:m_lg@members.co.jp