コロナウイルスの影響により、十分な準備期間がないままリモートワークに移行せざるを得ない企業様が増えています。業務をリモート化するには、単にPC・ネット環境があればよいわけではなく、規定・運用ルール・環境準備・社内浸透・支援体制など多角的な観点が必要です。特に一定規模以上の企業の場合、「えいや」で進めることも難しい状況です。

本記事では、1,500人の社員と全国に拠点を持ち、またお取引先もセキュリティ基準が非常に高い大手企業様を中心に対応している株式会社メンバーズの取締役 高野さんに、上記のような様々な観点について実態をお伝えします。(4月17日に行ったウェビナー内容を記事化しています)

質問への回答者

高野 明彦

高野 明彦
株式会社メンバーズ 取締役 兼 専務執行役員

一橋大学卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。その後、2005年に株式会社メンバーズに入社し、2016年4月常務執行役員に就任。2006年11月の株式公開を始めとし、リーマンショック後の全社変革プロジェクト、人事制度改革、中期経営計画の策定・実行、ミッション・ビジョンの浸透プロジェクト、東京証券取引所市場第二部上場など全社的な重要プロジェクトの推進を数多く担う。

リモートワーク導入について

Q. 大企業が顧客であり、高いセキュリティが求められる中で、なぜメンバーズでリモートワーク導入を行ったか?

働き方改革の流れの中で「働き方に制約のある社員でも、働き続けられる環境が必要だった」というのが最も大きな理由です。

今後、日本全体が人口減少&働き手不足になる一方で、IT人材はますます重要度が増してきます。その人材を確保するために、地方在住であったり、育児中・介護中であっても、働き続けられるための1つのメンバーズのテレワークデイズでの検証結果仕組みとしてリモートワークを推進しました。

一方で、リモートワーク化が経営の効率性・生産性を下げるものであってはいけないという考えも当然あります。リモートワークを導入しつつも、生産性も同時に上げていく必要があると思っていました。

そこで2019年のテレワーク・デイズで試験的に行った「全社員のリモートワーク」で、リモートワークの方が稼働率・残業時間などがむしろ改善していることを実証し、導入を進めました。

それ以外にも、重要度としては劣後しますが、「柔軟な働き方」などの理由もあります。

Q.リモートワーク化したことによるメリット・デメリットはなにか?

メリットは「生産性がむしろ高められた」という点ですが、そこには2つの要因があると思っています。

1つは、リモートになることで、チームマネジメントの高度化が促進されたという点です。リモートワーク導入を検討すると、通常はマネージャ陣が「管理しにくくなる」という理由で反対しがちです。しかしおそらく、このように反対してくる場合、オフィスにいると「管理しているように感じている」だけで、実際には管理できていないのではと思っています。
リモートワークでは、意識的に状況可視化・進捗共有をしないと、上司も部下も不安になります。そこで、朝会・夕会での進捗共有や、タスク可視化などをより明示的に行うことになります。また、それぞれがリーダーシップと責任を持たざるをえなくなります。

2つ目に、いわゆる「付き合い残業」が減った点です。オフィスにいると、どうしても「周りがやっているし、もうちょっと仕事するか」といって、あまり必要がない残業が増えてしまう傾向があると思います。その点、在宅だと自分のペースで仕事をやめることができ、不要な残業が発生しなくなりました。

デメリットは、大きくは感じていないのですが、強いて言えば2つあります。

1つは「人により働きすぎになりがち」という点です。責任感があり真面目な人間が多いこともあり、メンバーズでは全体として「時短」を目指してはいるものの、長時間労働などに繋がる可能性はあると思っています。

もう1つは「相談しづらい」と感じる人が出る点です。リモートだとオフィスにいる時よりは気軽な相談がしづらく、仕事を抱えすぎてしまうリスクがあります。この点に対しては、前述した朝会・夕会などコミュニケーションの場を作ることが重要だと思っています。

 

Q. 経営陣がリモートワーク導入に否定的だが、どうしたらいいか?

経営陣のよくある心配は「サボる」「働きすぎる」「生産性が下がる」「セキュリティ」などだと思います。

「サボる」という不安については、そもそもサボる人はオフィスに出社していてもサボっており、採用自体の失敗だと思います。真面目に働く人なら、その懸念はあまりないです。

一方「働きすぎる」という懸念はあり、長時間労働などが発生しないような労務管理は必要になります。

「生産性が下がる」という不安に対しては、上述の当社の取組結果(残業時間・稼働率のデータ)などもぜひ参考にしてください。

「セキュリティ」については、本記事の下部でも触れていますが、あわせて公開中の当社のテレワーク規定(https://www.members.co.jp/company/news/2020/0303.html)もぜひご活用ください。

 

Q. メンバーズの経営陣は最初からリモートワーク導入を推進していたか?

実は私自身は、オフィス出社派で、リモートワークは反対でした。

ところが、地方拠点によりリモートでのコミュニケーションが増えたり、働き方改革でママ社員が増えたり、積極採用においてリモート化の重要度が増していくなどの様々な流れを経て、全面導入を決断しています。決断までには2~3年はかかっていますね。

このように試行錯誤してきた経験があり、各企業のリモート化を支援するサービスも最近始めている(https://www.members.co.jp/company/news/2020/0402.html)ので、ぜひ必要な方はご相談ください。

 

Q. リモートワーク化に向けて、どの程度の投資をしているか?(どのように投資規模・ロジックを考えているか?

設備的な投資は以下程度です。
・パソコンのシンクライアント化
・ネットワーク回線の準備
・VPNの構築

投資対効果のロジックとしては、上記のようなコストに対し、採用ブランディングや生産性向上という視点で妥当かを考えています。

また、これまでは部分的なリモートワーク導入でしたが、コロナにより全面的なリモートワークが増えたことで、オフィス代・交通費などが削減できる可能性があると思っています。毎年数百人単位で社員が増えており、オフィスも基本的には1人1席を前提に増床を続けていましたが、拡張をしない可能性もありえると考えています。

 

Q. 今後、日本企業はリモートワークにどのように取り組むべきだと考えるか?

まず日本社会として「生産人口が減る中で、いろいろな人が働ける環境をどのように作るか」という点で、よりリモートワーク普及に取り組むべきだと思っています。

企業単位では、大企業・中小企業で状況は異なると思いますが、企業の生産性をあげ、同時に社員の幸福度も上げていくための手段として、リモートワークをより活用できるとよいと思います。

 

リモートワークの環境

Q. リモートワークにはどのようなパターンがあるか?(在宅、サテライトオフィスなど)

基本的には在宅が多いですが、カラオケ・喫茶店などでの仕事や、サテライトオフィス等もあります。また当社では全国に地方拠点があり、それらも広義ではリモートワーク拠点の1つだと思っています。

 

Q. 地方でわざわざ拠点を作る意味があるか?在宅でいいのでは?

理由は2つあります。

1つは、そもそも「ずっと在宅がいい」とは思っていないということです。在宅でしか働けない場合は在宅でもいいですが、出社して仲間の顔を見たい人も当然いると思いますし、「一緒に働く」というのも幸せの1つであるとも思っています。在宅だと、偶然の出会いやダベリ、かっこいい言葉でいうと「セレンディピティ」のようなものは減ってしまうと思います。

もう1つは、拠点がある方が採用がしやすいという点です。フル在宅を希望する人もいることはいますが、そういう人ばかりでは当然ありません。

 

Q. リモートワークの場合、端末などの環境はどのようなものを支給しているか?

基本的には会社支給のノートパソコン(シンクライアント)です。個人所有のパソコンは、コントロールができないので、利用禁止にしています。

スマホについては、現状は個人所有スマホにおいてメール閲覧などの一定の操作のみ許容していますが、会社支給への切り替えも検討中です。

 

Q. リモートワークにおいて、通信環境はどのようにしているか?

基本的には個々人が用意しています。在宅勤務のルールとしても「通信環境が用意できること」を1つのルールにしています。

ただ、今回のコロナ対策で、基本的に全員在宅になりましたが、中には通信環境がない人もいるので、モバイルWi-Fiの貸与などを進めています。

 

Q. 在宅の場合、光熱費・通信費の負担はどうしているか?

これまでは「在宅をやりたい人はどうぞ」というスタンスであったので補助はしていませんでした。全員がリモートでもなく、オフィスの賃料・光熱費も通常通りにかかっていたので、補助を増やすロジックがなかったこともあります。

ただ、今回のコロナ対策では、半ば強制的に在宅になり、光熱費負担が実際に増えているという声もあり、数千円の補助を出し始めました。

 

リモートワークのセキュリティ

Q. セキュリティルールとして、どのようなルールを設けているか?

パソコン利用については、会社支給のノートパソコン(シンクライアント)の利用必須とし、プライバシーフィルタ着用を義務付けてます。

会議では、家族・周囲の人に画面・音声が漏れないことを必須としています。

またクライアントの個人情報管理などは、現状は出社必須としています。

その他の細かな規定はテレワーク導入マニュアルに準じています。

 

Q. セキュリティルールの担保状況をどのようにチェックしているか?(どうチェックするとよいか?)

組織としては、利用ログでわかるものは、ログベースでチェックしたり、定期的な内部監査も行っています。

より日常的な取組としては、いわゆる「ピアプレッシャー」(同僚同士で意識を高め合う取組)を重視しています。
アナログですが、毎日の朝会時に、チームごとにセキュリティルールの読み合わせをしています。この読み合わせを行うことで、同僚同士でも意識が高まりますし、ルール違反が起きにくいような状況を作っています。

 

Q. セキュリティの問題で本社サーバ利用が必要で出勤が必須になる場合、どのような対応をしているか?

原則は在宅勤務ですが、どうしても個人情報があったり、専用線でないといけない場合だったり、お客さん側に行く必要がある場合は、出勤をしています。

大前提として、我々が行っているのは「日本を代表する大企業のWebサイト運営」であり、もはや社会インフラの1つであると思っています。政府や自治体要請には当然従いつつ、交通機関やスーパーなどはしっかり営業しているように、業務として必要な場合は、社会的使命としてできる限り業務は遂行すべきと思っています。

また専用線は東京・地方拠点で二重化するなどのBCP対策もとっています。

 

Q. リモートワークにおいて個人情報をどのように扱っているか?

クライアントの個人情報については、個人情報用のネットワークが切り分けられており、そこにいくには会社の特定の場所&パソコンでないとNGとしてます。そのため、現状でも個人情報を取り扱う場合には出社が必須です。

ただ今後は、オフィス環境と同様の状況をリモートでも実現できるようにしようとしています。具体的には「ログ監視」「画面監視」により、全行動が監視できる状態をリモートでも作ることができれば、個人情報の取り扱い要件の別のオプションが検討できると思います。

 

リモートワークでの組織運営・コミュニケーション

Q. リモートで働く社員の生産性を向上・維持するための仕組み・コツは?

細かなテクニックよりもまず、社員全体に「リモートワークにすることで、さらに生産性を高めるチーム運営を目指すべし」という共通認識を持ってもらうことが重要です。

その上で、個人としての生産性は当然のこと、チーム生産性を下げないための取組をチームごとに考えさせています。具体的には、リモートワークに入る前に、想定課題やリスクと、それに対する対応方針の計画書を作っています。チームごとにスケジュールや手順が異なるので、それらは個別に考える必要があります。

 

Q. リモートだと顔を合わせたコミュニケーションが減るが、どのような工夫をしているか?

毎日の朝会・夕会がメインです。チームごとに時間・長さは異なりますが、各5~10分程度の会を実施しています。

その上で、チャットやウェブ会議はいつでも出れる状態にしたり、スケジュールを記入して「いつどこで何をしているか」がわかるようにしています。

 

Q. リモートで会議をする場合、どのようなことを留意しているか?(特に10名以上で人数が多い場合)

「会議室でのリアルな参加者」がメインで、部分的にリモート参加がいるような会議だと、リモート側が疎外感が出てしまい、運営が難しくなります。オフィスにいる人間もなるべく1人1接続とし、全員が1:1の状況で参加できるように工夫しています。

また会議運営者がしっかり1人1人に話をふるようなファシリテーションも重要だと思います。

 

Q. 1on1は導入してるか?

会社としての必須の仕組みにはしてないですが、やっているチームが多い印象です。リモート化したことで、より重要な取組になると思います。

 

Q. リモートでの勤怠管理はどうやっているか?

勤怠管理ツールでウェブ打刻しています。残業の場合、事前に残業申請→承認が基本になります。

残業を増やしすぎないためには、各メンバーに「残業見込みがあるか」を明示してもらい、自己管理をしてもらうようにしています。

 

Q. チャットツールは全社統一しているか?

全社ではグーグルHangoutを導入しています。
またこれとは別に、顧客に合わせてSlackなどを使っているチームもいます。

 

Q. 在宅時の服装規定は?

ありませんが、ちゃんと着替えることを推奨しています。
服装だけでなく、健康管理も仕事の1つである、という意識を高めています。