グリーの特例子会社の障がい者雇用事例!『障がい者 × 在宅勤務』の可能性

法定雇用率2.3%への引き上げや新型コロナウイルスの影響の長期化など、障がい者雇用において様々な変化や課題が発生しています。
社会情勢に合わせ、在宅勤務へと切り替える企業がいる一方で、「体調不良」「コンディションの把握」「稼働状況の把握」等の課題があり在宅勤務に踏み出せないといったご相談を受ける機会が増えてまいりました。
グリービジネスオペレーションズ株式会社で事業管理部マネージャーを務める田村氏に、グリービジネスオペレーションズ様の事例を紹介するとともに、「障がい者×在宅勤務」の安定稼働のポイントについて2020年10月27日に開催されたセミナーにてご紹介いただきました。


登壇者紹介

田村 真梨子

田村 真梨子 氏
グリービジネスオペレーションズ株式会社
事業管理部 マネージャー
障害者職業生活相談員 / 雇用環境整備士(Ⅱ種)

2010年からグリー株式会社でソーシャルゲームのプランナーを経てチームマネージャー、プロデューサーとしても従事。
2019年からグリービジネスオペレーションズ株式会社に異動し、現在は特性を持つ社員達のマネージャーを担当しながら事業側との業務調整を行っている。


はじめに

グリービジネスオペレーションズの田村です。
本日は『障がい者×在宅勤務』の可能性というテーマでお話をさせていただきます。よろしくお願いします。

まず私の簡単な自己紹介をさせていただきます。

略歴ですが2010年にグリー​に中途入社​し、そこでソーシャルゲームのプランナーやプロデューサー、チームマネージャーを担当しました。その際、「チームワークで何かを達成する楽しさや、人を応援することが好きだ」と気づき、2019年にグリービジネスオペレーションズに異動しました。今現在は12人のチームのマネージャーを担当しつつ、事業側との業務調整を行っています。

本日のお話は
1.当社紹介
2.在宅勤務での取り組み
3.在宅勤務のリアル
4.最後に

という流れで進めていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

当社紹介

まず当社紹介です。

親会社はグリー株式会社で、

ゲーム事業、ライブ・エンターテイメント事業​、メディア事業などを手がけております。本社は六本木で、弊社(特例子会社)は横浜にあり、社員数は約50名ほどです。

こちらはクローズアップ現代で特集をしていただいた時の写真ですが、7割が発達障がいのある社員達です。

こちらは現在弊社で働いている社員の障がい特性の内訳です。

うつ病や精神疾患の手帳を持ってる方や、ADHD(注意欠陥・多動性障がい)・ASD(自閉症スペクトラム)など様々な特性を持つ方が一緒に働いています。

また、弊社は
「能力を最大限に発揮でき、仕事を通じ自律的に成長し続けられる会社を創る」
を企業ビジョンに掲げています。
弊社では特性があっても合理的配慮があれば能力は発揮できると考えているため、様々な環境作りを積極的に行ってきました。

こちらもクローズアップ現代で特集された時の写真ですが、半透明のパーテーションを設置して隣のデスクとの境界線を感じにくくしたり、聴覚過敏の方にはイヤーマフの貸し出しもしています。

また、過集中から来る疲れやすさに配慮をし、業務時間中に30分間休憩ができる制度を設けています。休憩室の写真が右下に該当します。

こちらが実際のオフィスの写真です。本来出社しているときであれば、オフィス執務室内でみなさんが席を並べて業務を行っているイメージです。

また弊社の勤務時間は、9時半業務開始・18時半退社で残業は基本的にありません。

休憩時間はお昼に1時間休憩と15時半から15分間一斉休憩があります。

過集中になる方は疲れやすい傾向があるため、先程ご紹介した30分休憩を取れる休憩制度を使用し各自体調管理を行っています。


次に弊社の業務紹介です。業務は全てグリーグループ内から受託しており、ゲームの品質管理(リリース前チェック)や画像加工、メディア系のレポート作成や人事部門のデータ入力業務など多岐に渡ります。グループ会社から依頼された月300以上の業務を各マネージャーが自分のチームで対応できる業務か確認し、さらにそれぞれ向いている社員達に仕事を割り振って業務を回しています。

在宅勤務での取り組み

ここからは在宅勤務での取り組みについてお話をさせていただきます。
まず在宅勤務に至った経緯についてですが、このコロナ禍において3月頃より在宅勤務の切り替え準備を開始し、4月より全社員(事務系社員)を対象に在宅勤務を導入しました。

次に弊社で導入した在宅勤務について環境整備と自己管理の2点に絞り、具体的な話をしていきます。
1点目は環境整備についてです。
まず在宅勤務の導入が決まった段階で準備したことですが、弊社はノートPCとモニター1台で常時仕事をしているため、ノートPCの貸出と自宅にモニターがない社員にはモニターの配送手配をしました。
次にネットワーク環境の準備です。基本的にドキュメントのやり取りなどは Google のG Suiteを使うことが多いのですが、社内独自ツールも使用するので、セキュリティ強化のため二段階認証の設定をしたりVPN接続のアプリを入れ、自宅からでも社内ネットワークにアクセスできるよう準備をしました。

その他、オンラインオフィス支援金という名目で社員に一律5万円の一時金を配布しています。この支援金用途は人それぞれですが、デスクや椅子などの購入が多く、在宅でも身体に負担がない環境作りに役立ったようです。

続いて、基本的な支援以外の取り組みをご紹介します。
1つ目はビジネスチャットの導入です。

これまで弊社はメールがメインの連絡手段でしたが、在宅勤務に移行するにあたり、より迅速に連絡がとりやすいツールの必要性を感じ導入を検討しました。

今までは下記懸念点があり、チャットツールを導入していませんでした。
・個人間で様々なやり取りが発生してトラブルに発展しないか
・一度に情報が溜まってしまい社員の負担にならないか
ただ、実際にチャットを導入してみると、以前より情報共有がしやすくなりメリットの方が大きいことがわかりました。

例えばオフィスで1対1で質問があった場合に会話の内容は他者には共有されませんが、チャットなら質問に気づいた社員が誰でも回答でき、やりとりも残るので情報共有が容易です。

また、チャットになってから自分の疑問点について既に他の人が解消してくれていることもあり、仕事の進捗がスムーズになったと答える社員もいました。

その他の利点として、オフィスでは忙しそうな社員に声をかけることが躊躇われる場面もありますが、オンライン上では自分のタイミングで質問をし、相手のタイミングで返信が来るのでストレスを感じにくいようです。

一方で複数の情報を追うことが苦手な社員もいるため、慣れるまでに時間がかかる場合もあります。今使っているチャットツールは誰かが何かをお願いしたときにログを残しておけるタスク機能があるので活用したり、社員同士でリマインドがしづらい場合は、マネージャーが間に入って連絡をしたりと、できる対策をとっています。

「Web会議システム」の導入

環境面での取り組み2点目についてです。在宅勤務では導入されている企業が多いと思いますが、弊社でもWeb会議システムの導入をしました。

チームミーティングやマネージャーとの面談など顔と顔を合わせてコミュニケーションを取る際、活用しています。

「e-sportsクラブ」活動開始

環境面の新たな取り組み3点目は、e-sportsのクラブ活動の開始です。e-sportsについてご存知の方も多いと思いますが、オンラインで行う対戦ゲームのことですね。

オフィス勤務であれば休み時間に自然発生していた社員同士のコミュニケーションが在宅勤務ではなくなるため、共通の体験を通じてコミュニケーションが取れる機会を作りました。

こちらは会社として正式に承認している部活になり、機会があれば大会に参加することもあります。e-sportsの活動は繁忙期を除いた業務時間中に任意で参加できみんなでワイワイして盛り上がっています。
部活に参加している社員に話を聞くと、自然な会話ができるので息抜きになって楽しいという意見が多く、導入して良かった事例の1つです。

その他の配慮施策

ここまでの話を振り返ると以下の3つは全てコミュニケーションに特化している取り組みだったことがわかります。

①ビジネスチャット
②Web会議システム
③e-sportsクラブ活動

他にも配慮したことについてご紹介します。

 

面談オンライン移行はマネージャーとの面談だけでなく、産業医、保健士、カウンセラーとの面談も変わらずできるよう設定しました。また、社長とも1on1の機会があり在宅勤務移行後も変わらず実施しています。

また、オンライン勤務研修は在宅勤務に入る前に情報セキュリティについての研修などを実施しています。こうした研修を行うことで、自宅で仕事する際の注意事項について社員の認識合わせができています。

次に出社可能日についてです。5月末に緊急事態宣言が解除された後、社員の希望があれば週に1回は出社可能にしています。現在定期的に出社しているのは50名中5~6名ほどで、人が少ないオフィスは集中できるため良い気分転換になり、自分の中のサイクルを整えるために出社する人が多いようです。また、現在オフィスはフリーアドレス制にしています。

これまでの話は在宅勤務で取り組んだことを紹介しましたが、在宅に切り替わっても出社している場合と同様、気軽に質問や相談ができる環境を用意することが、社員の安心感に繋がりとても重要だと実感しています。

中には在宅勤務での環境の切り替えが苦手な社員もいるので、マネージャーが毎朝「今日の調子どうですか」とチャットやweb会議システムで連絡をとることもあります。また毎日社員に日報を提出してもらい、普段の業務で見えてこない不安や心配ごとを確認した場合は「今から面談しませんか?」とチャットをしたり、頻繁にコミュニケーション機会を作るようにしています。

「職業準備性のピラミッド」から見る、健康管理の大切さ

次は在宅勤務での自己管理についてお話しします。

こちらの図を見たことある方もいらっしゃると思いますが、職業準備性のピラミッドというものです。弊社が採用説明会をするときにご紹介しています。

まず、ピラミッドの一番下に健康管理があります。
規則正しい生活を送る日常生活管理
その上に働くために必要なコミュニケーション力などを指す対人技能、
さらに働く上でのルールやマナーを守る基本的労働習慣があります。
そしてピラミッドの一番上には業務に必要なスキルを指す就業適正があります。

どのようなお仕事にしてもこれらの土台を積み重ねてはじめて働ける状態だと言えると思います。

その中で一番下にある「健康管理が在宅勤務になってどのように変わるのか」ということは1つ心配な要素ではありました。ここでいう健康管理とは、自分の障がい特性を理解し食事・睡眠をしっかり維持できること、また、服薬が必要な人は薬を適切に飲めているかも含まれます。

では、​在宅勤務において健康面の変化​は実際にどうだったのでしょうか。​

これは特性の有無に関係なく共通していると思いますが、在宅勤務になり「通勤時間がなくなり睡眠時間が取れ疲労がすごく減りました。本当に良かったです。」という声をたくさん聞きました。

そして特に感覚過敏を持ってる人の場合、満員電車に乗って通勤することで強いストレスを感じてしまい、業務開始前にエネルギーを大きく消費している状態になっていましたが、在宅勤務に代わることでそのストレスがなくなったので良かったそうです。

他には「オフィス環境でのストレスが減った」という意見がたくさんありました。例えば人によっては他者のキーボード音や誰かの動きが視界に入ってしまい気になることもありました。そのためオフィス勤務の際は席の配置に大分気を使っており、「自席では集中しづらい」という声があればパズルのような感じで最適な配置を考え席替えを行っていました。

このように、オフィス環境では配慮が必要なことが在宅勤務により一気に解消された部分もあります。何より周りを気にしなくていいので、人によってはオフィスより集中しやすい環境になったかもしれません。

また一方で、月に一回の通院以外は外に出なくなってしまったというケースもあり、外出不足からうつの様な症状を引き起こす懸念もあります。そうなる前に私たちにできることは、健康管理に意識を向けてもらえるよう多方面から声をかけることだと思っています。

具体的には産業医、保険医、カウンセラー、社長、マネージャー、定着支援員の複数の面談機会に健康管理について聞くようにし、長期的な取り組みをしていくことが重要だと思います。

アンケート結果から読み解く「在宅勤務」のリアルとは?

次は在宅勤務のリアルについてのお話で、以前社員に取ったアンケートをご紹介します。

「在宅勤務をしてみて実際どうでしたか?」
「今後も在宅勤務で働きたいですか?」

というアンケートに対して約7割の社員が今後も在宅勤務をしたいと回答しました。その理由として「通勤の際のストレスが払拭されました」「よく眠れるようになりました」という意見が寄せられました。
先程の繰り返しになりますが、在宅というのは周りを気にする必要がなく、対人ストレスも軽減できるというメリットがあります。

一方で在宅勤務を希望しない社員も3割いました。その理由の1つとして「時間管理が難しい」ことが挙げられました。オフィス勤務であれば休憩や退勤時間など他の社員の動きに合わせて働けていたのに、在宅の場合は時間を知らせる人がいないので、過集中になり退勤時間を過ぎても気づかないケースもありました。これはアラート機能を使うなどして対策が必要になります。

その他の理由としては「家庭環境が集中しづらい」です。

例えばですが、考えられるケースはご家族と同居で中々静かな環境が作りにくい・または通信環境の問題で家族のいるリビングで仕事をしなければならないなどが挙げられます。この問題の解決は難しいですが、先程も紹介したように週に1回の出社日を設けているため、気分転換にオフィスに来ていただくことは可能です。

最後に

これまで在宅勤務導入についてご説明してきましたが、改めて振り返ると今回コロナの問題がなければ在宅勤務を導入する予定はなかっただろうと思います。「やる予定のなかったものが、やらざるを得ない状況になり、実際にやってみたら想定以上に機能した」というのが正直な感想です。
初めは不安も多かった在宅勤務導入でしたが、障がい特性のある社員にとってメリットも多いということが分かり、今後の働き方の選択肢が広がるとてもポジティブな良い発見でし た。

もちろん在宅勤務ではオフィス出社時よりもマネージャーや周囲のメンバーが直接フォローできる機会は減るため、社員1人1人により自走する姿勢が求められると思いますが、しばらくはこのまま在宅とオフィスを上手く使い分けたハイブリッドな勤務体系で弊社は今後もやっていく方針です。

今回のセミナーは在宅勤務について現在進行形で取り組んでいらっしゃる方に加えて、これから取り組もうという方もご覧になっていらっしゃるかと思いますが、弊社の取り組みが少しでもみなさまのご参考になれば幸いです。
本日はありがとうございました。

 

Q&A

Q1.障がいのある方に業務を発注して丁寧にお礼を伝えていたら「次も期待に応えようと張り切りすぎて調子を崩されてしまう場合」があるそうですが、そういった行き違いを避けるためのお知恵を拝借できると大変ありがたいです
確かにお仕事に対してとても強いプレッシャーを感じてしまう方もいますので弊社の場合は

「様々な特性の方が働いており、短納期の業務内容はマッチしません」

ということをあらかじめ依頼先に説明しています。そのため担当社員の体調不良や進捗がスムーズに行かない場合には依頼元へ納期延長の交渉をしています。
このようにお仕事を依頼される場合は「間に合わない場合は納期の延長ができますよ」ということを相手にお伝えするだけでも気持ちが随分と楽になるのではないかと思います。

Q2.「e-sports」に熱中しすぎることに対する対策は何かされていますか?
月末月初の繁忙期を除きますが、業務時間中にミーティングを設定し、任意参加形式で1時間ほど行っています。決まった時間で行うことで、業務時間に社員同士でゲームに没頭しすぎるということはありません。

また、e-sportsだけに限らず、在宅勤務できちんと業務ができているか気になる点はあると思いますが、弊社ではマネージャーが頻繁に社員に進捗確認のヒアリングをするようなことは行っていません。これは一例ですが進捗確認の代わりになる方法として、共通のドキュメントシートを用意し、タスク変更する場合に各自作業内容をそれぞれ書き込んでもらうことで何をしているかおおよそ把握できています。

Q3.冒頭にありました、5万円の支援金とは別に在宅勤務をするにあたって、毎月【在宅勤務手当】等の名目で諸手当の支給はしていますか?
この件については過去に議論になりましたが、現時点での支給は行っていません。今後の本社の方針やコロナ禍における社会情勢がどのように変わっていくか判断がつかないこともあり、手当の支給まで踏み込むことができていない状況です。
Q4.これから働く方に対して、アプローチ方法などありますか?※受け入れるにあたって気を付けていることなど
弊社の在宅勤務導入がスムーズに行った理由は、在籍している社員達のPCリテラシーが在宅勤務を行うにあたって必要と思われる基準はあった、または仕事を通して高くなったからだと思います。
現在採用についてはコロナ禍以降はストップしています。今後採用を再開する場合、新入社員の方には1~2週間ほど出社してもらい最初だけ直接指導の必要はあるかもしれません。
Q5.障がいのある社員で在宅時に体調を崩された場合、どのようなフォローが必要でしょうか(発注元である会社への説明を含め)
体調を崩す社員が出ることは想定内のため、業務の担当者を属人化(特定の人に任せて他の人はタッチしない)させないようにしており、大体ひとつの業務に対して2~3名ほどの人数でローテーションしながら対応できるようにしています。
取引先が弊社のグループ会社であるということも大きな理由なのですが、あらかじめ弊社の特徴や状況を事前に説明し十分に理解いただいてから業務を請け負っているため、そのようなトラブルが起きた場合には、正直に状況をお伝えし、納期の調整をさせていただいています。

ご質問等がございましたら、お手数ですが下記運営事務局までご連絡のほどよろしくお願いいたします。
メールアドレス:m_lg@members.co.jp