障がい者雇用で企業業績が向上!? 実例でわかる障がい者雇用の成功方法

障害者雇用促進法によって定められた障がい者法定雇用率2.3%への引き上げや新型コロナウイルス感染拡大など、障がい者雇用において様々な変化や課題が発生しています。
その課題の一つに障がい者雇用の業績貢献がございます。本セミナーでは、特定非営利活動法人WEL’S様の事例を紹介するとともに、「障がい者×業績向上」のポイントについてご説明いたします。


登壇者紹介

橋本 一豊

橋本 一豊 氏
特定非営利活動法人WEL’S 理事長

大学卒業後、飲食業、児童養護施設での勤務を経て北欧に渡り、重度の障害のある女性の家に同居させていただきながら福祉施設や教育現場での業務に関わったことで障害福祉分野の関心が高まり帰国後は障害者入所施設に勤務。その後、NPO法人を立ち上げ現在に至る。 現在は障害のある人の就労支援の実践業務を行いつつ、障害者雇用を行う企業に対しての立ち上げ支援、社内研修の実施、関連機関との連絡調整、各種制度の情報提供など全般の相談を手がける。また、国家資格である社会福祉士取得のための養成校の講師を務めるなど次世代育成に向けた活動を行っている。


 

はじめに

本日のテーマは成功事例に学ぶ「障がい者×業績向上」の実践方法についてです。

まず私どもについてのご説明をさせていただきます。平成16年の10月に設立した法人です。現在はこのような事業を行っております。

主に国からの委託や、総合支援法に基づく事業を行っております。それ以外にも今回のように研修事業として、企業者様や支援者様向けの研修を行っております。現在の従業員数は32名です。

東京都全域を拠点としております。

本社は千代田区です。それ以外に実際に障がいのある方の支援を行ったり企業さんのご相談に乗る拠点としては、千代田区以外にも西日暮里や足立区の舎人というところがあります。障がいのある方が通って就職に向けた訓練をして企業就労を目指していく。そのための支援をしていくサービスを展開している法人です。

「障がい者雇用」大幅促進のカギは「中小企業」の取り組み

障がい者雇用の実情からまずマクロな視点で説明をさせていただきます。

ご存知の方も多いとは思うんですが、右肩上がりで雇用者数が伸びているという状況があります。年々障がい者雇用率は上昇しているという状況があるんですけども、一方で数字で見ていくと雇用率の達成割合は48%ということで、半数以上の企業さんがまだ未達成の状況にあるということです。

細かく内訳を見ていくと、厚生労働省のページを見ていただくと分かると思うんですが、ほとんど雇用率を達成している企業さんは大企業が中心です。中小企業に関しては雇用率を達成されてない企業さんが圧倒的に多いいうような実情があります。それをサポートしていくために、私ども就労支援者と言われるような機関がチームを組みながら企業さんのサポートをしていく機会がものすごく増えています。

私ども就労支援を行っている人間の立場としては職場定着率というものを非常に重要な課題として捉えております。就職するまでは順調だったが半年や1年で退職してしまう比較的移行定着の期間が短いという問題点を改善していくために、やはりジョブマッチングが非常に重要だなという風に思っております。そのためには「お互いの情報をシェアしながらより理解を深めるようなアプローチが必要だ」と感じながら日々実践をしております。

法改正と「ジョブマッチング」の必要性

話は変わりますが「障がい者雇用促進法の改正の動き」というのがありまして、主にこの三つになります。

一番大きなところは一番下の「法定雇用率の引き上げ」になると思うんですけども、2021年の3月1日から雇用率が引き上げられるということで「民間企業の場合は2.2%から2.3%に引き上げられます」ということが決まりました。

それ以外にも事業主に対する給付制度の創設として「本来雇用率の対象にはならない範囲の障がいのある方を短時間で雇用した場合に給付金を出します」という制度ができたり、中小企業が対象になるんですが、300人以下の企業に対しては障がい者雇用の取り組みが認定された場合には優良企業とし認定される。こういった制度の創設など法整備は徐々に進んでおります。

一方で上手くジョブマッチングをさせていただくためには「企業だけではなく、サポートしている機関とパートナーシップを組みながら進めていくことが必要」という風に私どもは感じております。

「就労支援」とは何か?

先ほどから出てきた「就労支援」という言葉について簡単に説明をしますと、障がいのある方の強みや能力といった「特性」を活かしながら、仕事に結びつける手助けを行うことです。

具体的な流れとしましては、担当する障がい者の方が理解できるように、仕事の内容や職場環境について丁寧にお伝えし、インターンシップを重ねながらジョブマッチングを進めていきます。ですので単なる就職支援ではなく「就労支援」という言葉を使っています。

実際に仕事が定着して職場生活を安定して送れるようになるためには、仕事ができるようになることも必要ですが「余暇」がとても重要な要素になりますね。

現在では多くの方がコロナ禍において外出を控えて自宅で過ごす時間が増えております。

その間で「いかに充実した時間を作るか」「心のリフレッシュをするか」という点を上手くアシストして生活面での不安要素を減らしていくことが必要になってきます。これが就労支援の役割と機能です。

最終的に目指すのは「ナチュラルサポート」の形成

就労支援のプロセスであるガイダンスから定着支援というお話をさせていただきましたけども、「ガイダンス」というのはこの相談から始まっていきますけども、その次に「アセスメント」という障がいのある方のことを理解をしていくという段階に移ります。

理解をした上で職場開拓をしていき「職場環境のアセスメント」というのがひとつ特徴にはなるんですが、実際障がいのある方が働く職場がどんな環境なのかということです。

例えば職場のノイズがどれくらいあるのかという点です。エアコンやPCのキーボードの音だけが聞こえるような静かで落ち着ける環境なのか、各所で話し声が聞こえるようなざわついた環境なのか。こういった所はチェック項目になります。

また職場で働く従業員の性別や年齢の分布がどのようになっているのかによって、その会社独自の空気感が形成されますので、事前に支援者が会社を訪問することによって環境アセスメントを行い、その上でジョブマッチングを図っていきます。このプロセスが雇用前の支援では非常に重要であるといえます。

ジョブマッチングのあとは職場内支援として支援者が一定期間訪問を行って「何か困ったことがないか」ご本人から聞き取りをするですとか、問題ない部分と配慮が必要な部分についての調整を行い、徐々に支援者はフェードアウトをしていきます。

あくまでも私たちは一過性の支援に関わっていくわけなので、最終的に目指す方向性としては図に書いてありますように「ナチュラルサポートの形成」と言いまして、職場の方が自然な形でその方をフォローしていくような体制づくりをしていく。それが就労継続を支えるためには非常に重要である。私どもは日々こういった一連のプロセスの下で、就労支援の役割と機能を果たしているこのような仕事を行っております。

障がい者雇用で「業績を向上」させる、6つのポイントとは?

「障がい者雇用について「業績を向上させるためにはどのようなポイントがあるのか」ということについて説明をさせていただきます。ここに書いてあることは受け売りでして、参考として下に書いてあります。なぜ障がい者を雇う中小企業は業績を上げ続けるのかというような本がありまして、この中に書いてあったものの中で私自身の経験とも合致するものをいくつかピックアップさせていただきました。

全部で6つあります。

・人材育成のノウハウができる
・社内の業務の流れが改善される
・職場環境が改善される
・社員が前向きに取り組むようになる
・適材適所のノウハウが形成される
・戦略的観点が身につく

という風に書いてありますけども、具体的にこの部分に関して今日は説明をしていきたいと思います。

まず社員さんについてですが、障がい者雇用に前向きな社員さんというのは実は障がい者雇用を通して人材育成の力をつけているということが分かっていまして、これは本にも書いてあります。実際に好事例と言われる障がい者雇用がうまく行っているような企業さんのところに訪問すると全く同じようなことをおっしゃるんですね。

実際に社員さんから聞いた内容としては、改めて「仕事の内容を丁寧に教えることが必要だ」ということを感じ、それは障がいのある方だけに関わらず「新人教育の際にも必要なことだ」と改めて思ったそうです。

特に中小企業さんですと「属人的な業務」が多い企業さんがありまして、これまでマネジメントをする上で人に頼っていたところを仕組み化して行くことで大きな効果が出たとおっしゃる企業さんが多かったです。

その具体的な内容としましては、例えばマニュアルの作成です。今までは属人的で特定の人に人に頼っていましたが、マニュアルを作成することによって誰がその仕事を担当しても問題なく行える仕組みができたのです。

障がい者の方を雇用する際に「適性の見極め」という意味で問題なく仕事を任せることができるのか最初は疑問や不安があったようなのですが、実際に採用して働いている姿を見ると健常者の方と何ら変わりがなかったそうです。昨日訪問した企業さんの場合ですが、障がいの有無に関係なく「人を理解するということは人材育成をする上で非常に重要なことだ」ということを障がい者雇用を通して学ぶことができたと、本当に喜んでいらっしゃいました。

業務向上と職場文化の醸成につながったとありますけども、障がいのある方の受け入れをすることで結果的に社員全体の満足度が向上したり、一人一人の仕事を切り分けることによって結果的に全体のパフォーマンスの向上につながったということが私が参考文献とした本に書いてあります。CSRなどの研究をなさっている影山先生という大学教授の方が執筆された本ですが、経済学の視点から考えているところが興味深いです。福祉の方面から見てもすごくよく理解できますし、おそらく企業さんにとっても理解できるところが多いのではないかなと思っております。

障がい者雇用に成功している企業はまず「仕事の切り出し」を行っている

次にマッチングの重要性についてお伝えしたいと思います。

ジョブマッチングを行う上でよく出てくる言葉として多いのが仕事の切り出しです。ジョブマッチングをしていくためにはまず「仕事を切り出して戦力として障がい者雇用をしていくということ」が非常に重要です。

実際に好事例の企業さんを見ても、

①仕事の切り出しを行う (障がいのある方向けの仕事を構築する)
②ジョブマッチングを図る

というプロセスを作っていくということがとりわけ大切なのです。言い換えると、障がい者雇用がうまくいった企業さんは事前に「仕事の切り出しをしている」ということです。雇用をしてから切り出すのではなくて事前に切り出してから障がい者雇用を行っているわけですね。

次の項目ですが「相談相手を探す、知識や事例をインプットする」と書いてあります。これはどういうことかといえば、今回の場合ですとメンバーズギフテッドさんや私どもも含まれますが、

気軽に話せる人間に相談をしながら、
「今の障がい者雇用の市場がどうなのか知りたい」
「うまくいった事例を紹介して欲しい」
といった情報の収集を始めていくことが重要だと思います。

次に「他機関との協同や業務提携等で取り組む」というところで、あくまでも社内だけで抱えるのではなく、他の事例を参考にしつつ他社や他の機関とも協力をしながら取り組んでいくところですね。「餅は餅屋」という風に思えばいいのかなと思いますが「得意なところはお互いに協力をしながら取り組んでいきましょう」というイメージです。

次にすごく重要だと思っていまして「社内のキーパーソンの存在」です。先ほど申し上げた「前向きな社員」は当然キーパーソンになるでしょうし、あとは潜在的にご家族や親戚に障がいのある方がいらっしゃる方ですね。そういった方々にも加わっていただいて、情報の共有をしていただき、取り組みを社内全体に広めていくということは非常に良いポイントになろうかと思います。

最近これは気づいたことなんですけども「必ずしも人事部だけが会社全体の仕事について熟知しているわけではない」ということが分かりました。

IT関連の人材不足という話がありましたけども、「IT業界で障がい者を雇用したい」という要望が増えている中で、システムエンジニアさんなどシステム周りの取り組みをしている方が実のところは業務全体をも把握していて、その方がキーパーソンとなりえる存在である。そういった発想は今までになかったなと感じています。

次に「社員との接触の機会について増やす」です。先ほど紹介した本の中でも書いてあったんですが、なるべく人との接触を避けるような場所に配置するのではなく、なるべく多くの人と接する機会を設けた方が仕事がうまくいくという風に書いてありました。

業務の棚卸についての「7つ」のポイント

先ほど「仕事の切り出し」のお話をしたのですが、いわゆるジョブという「仕事そのものに焦点を当てた業務の棚卸」というようなポイントで見ていくと、この7つのポイントが書いてありました。

まず「難易度の低い業務」です。これは全員が適用されるわけではありません。特に精神障がいをお持ちの方では今までシステムエンジニアで活躍されていた方や一流大学を卒業した方もいらっしゃったりするので、当てはまらないケースも当然ながらございます。

他には以下のようなものがあります。

「高度な判断や意思決定の必要がない業務」
「納期が比較的緩やかな業務」
「スポットではなく定常的に発生する業務」
「専門的な知識を要さない業務」
「顧客や他部署などとの交渉や調整が少ない業務」
「一度覚えてしまえば、同じことを繰り返して進められると業務」

これはその人に合わせた職務構築を行うというより「職務の切り出し」です。切り出すポイントとして、こうした仕事が切り出しやすいという捉え方をしていただければと思います。

職務切り出しのイメージですが、これは一般的な共通点として私自身が感じているのは、工夫している企業さんはまず社員に説明会を開くわけです。

「障がい者雇用への取り組み」や「障がい者雇用の概論」について説明する中で、それぞれが属人的に今までやっていた仕事の中で「障がい者の方にお願いできそうな仕事は何ですか?」というアンケートを取り、そこから切り出された仕事を一つの職務構築とします。

イメージとしてはこのような例です。

営業のセクションの方、人事の担当者の方、経理の担当者の方、それぞれが本来業務でやっている仕事以外の部分で切り分けられそうな仕事。つまりは片手間でやっているような仕事ですね。片手間までやっているような仕事を切り分けて一つの仕事として組み立て、そこを障がい者雇用として消費するというなイメージです。

よくバックオフィスの仕事というところで取り組んでいる企業さんは多いですけども、そのようなイメージで職務構築をしてジョブマッチングに取り組むような進め方をしています。

次に職務創出の効果になりますけども、事前に職務創出をすることによって求人情報を明確化できるというような効果があります。

そのことによってジョブマッチングがより向上することにつながるでしょうし、求人情報が明確であればあるほど受け止める側や見る側も「この仕事だったら自分もできそうかな」という風に思っていただきやすくなります。

障がいのある方は具体的なイメージを持つことが苦手だったり、情報をキャッチするという所で支援が必要な場合もあったりしますので、具体的な作業内容を提示することで求める人材を雇用しやすくなる。つまりは「戦力としての障がい者雇用」というのはここの部分に集約されると思います。

例えば事務の例を挙げますと、入力作業、コピー作業、ラベル貼り、封入作業など色々な職種があると思うんですが、当然入力作業であれば一定のパソコンの能力・知識が必要とされるようなイメージになるでしょうから、求人がより具体化されます。

軽作業であれば物品の仕分けや納品の確認などという仕事内容を具体的にすればするほど、より可視化されて受け取る側が受け取りやすいというような情報になります。

この「仕事の見える化をする」ことや先程お伝えした「インタビューをする」ことによって、結果的に社内の理解の促進にもつながるということがわかりまして、現場との職務切り出しの作業を通じて、障がい者雇用に関する関する理解が深まったり、社内業務の共有ができたりするわけですね。

「今までこの人って何の仕事しているかわからなかったけども、実はこういった仕事をしてたんだ」という風に職場内でのコミュニケーションが活性化したり共有化できる、そういう副次的な効果が期待できるというのもあります。

そして結果的に今日の一番のテーマ「生産性の向上」につながるということです。これまで社員が片手間で行なっていた職務で障がいのある方が能力を発揮しやすい職務を創出できれば、社員は本来の職務に専念できるようになり企業全体としての生産性が向上するというようなことが言えます。

ここまでのところが「ジョブに焦点を当て、戦力としても障がい者雇用を進めることによって結果的に生産性が上がる」という流れです。

求められるのは一元的ではない「障がい者の特性を理解した配慮」

次に職務創出の話に戻ります。

障がい特性の理解というところで、それぞれの障がい特性に合わせた配慮ということがあるわけですね。当然戦力としての雇用ということも大事な視点ですが、その特性を生かすための配慮も必要です。「会社としては一体どんなことに取り組めばよいのか?」というところで私どもも介入させていただいております。

さて、それぞれ障がい特性に合わせた配慮というのは異なります。

身体に障がいのある方であれば、物理的な配慮になるわけです。段差の解消ですとか、通勤手段などが当てはまります。現在では多くの会社が在宅就業の採用をすることで、結果的に身体に障がいのある方によって働きやすい・参加しやすい社会情勢になわってきたという状況もありましたけども、そういった選択肢を提示することも大切です。

知的に障害がある方の配慮については、わかりやすい言葉遣いマニュアルの作成です。先ほどの一連の流れを事前に示すことによって「Aさんの仕事はこの手順でこの時間軸で作業を進めていきます」ということを事前のガイダンスで伝えます。そうすることによって「今まで経験したことに近い仕事だから自分でもできるかもしれない」という風に思ってもらう。動機づけがあってマッチングさせていく。そのようなコミュニケーションについて配慮していくということです。

次に発達障がいの方の特性に合わせた配慮です。よく言われるのは視覚優位と言われておりまして、言語で伝えるよりも事前にマニュアルであったりとか、可視化されたものを通して説明した方がその人の能力が発揮されやすいという風に言われています。

精神に障がいのある方に関しては定期的な面談を行います。今どういったことに不安を抱えているのかですとか、勤務時間の調整ですね。やはり長時間働くことによって負荷がかかって行ったりする場合には、時間を調整しながら単時間から始めていく。

そういった流れもあって先ほど新たに新設された制度のように、短時間就労という枠組みの中では実際に精神に障がいのある方の雇用というのは今すごく進んでいます。

 

障がいについて考えるだけでなく、その先にある「人の理解」へ視野を広げる大切さ

こういった状況がある中で、それぞれの特性に合わせた配慮をしていくところが雇用促進には必要という風に言われています。

そのためにはまず人の理解をしていくことが重要です。これは障がいのある方だけには限りません。人事の方のご相談を受けると「毎日遅刻してくる一般社員がいるのですがどうしたらいいでしょうか?」といった電話相談があったりもします。

私たちの仕事はソーシャルワーカーと呼ばれるもので、障がいがあるなしに関わらず人の理解をするという視点で物事を考えます。ですので、人事の方々から学ぶことは数多くあります。

特に何千人という方と面接をしている方は表情や立ち振舞い、コミュニケーションなど「本当に色々な観察をしているな」と思いますね。人を理解し、社員を理解し、そして適性を理解していく。適材適所で配置をしていくことが結果的に生産性を向上させていく。これは障がいのある方の雇用だけに限ったことではなく、業績が伸びている企業というのは実はこういった共通項があるのではないかと思います。

現在のコロナ禍において在宅就労を取り入れたことで効果覿面な企業さん、逆にギクシャクし始めた企業さんがあります。前者は「人の理解をして行こう」「コミュニケーションを取っていこう」という文化が根付いているような、元から障がい者雇用をしやすい会社さんだったのではないかなという風に私の主観ではありますが思うところがあります。

今日は時間の関係であまり触れることしかできませんが、その人の理解をするために私たち専門家はどういった視点でその人を見ているのか。冒頭で申し上げました「障がい特性の理解」というところはここに尽きるんですね。

障がい特性、例えば「体が不自由である」という場合はその人だけを見るのではなくて、その人との関係性、つまりは相互作用の中で見ていくということをすごく意識していて「障がいそのものというのはさまざまな因子との相互作用によって生み出されるもの」という捉え方ですね。

さまざまな因子と繋がっていて、例えば、あるIQが高い発達障がいのある方から「会議の場で感情論になってしまったり無意味なことを発言している場面を見ると、もっと建設的、理論的に物事を考え発言してほしいけどそれを言ってしまうと空気が読めないと言われる」という生きづらさを聞いたことがあり気づいたことがあります。このことは、その人の個性や本当に持っている能力を、実はその会議の環境因子である人的な環境がその人の能力を理解していないというようなことが言えると思いますので、障がい理解をしていない周りの人たちが逆に言うと障がいであるという風に捉えられることもできると思います。

その人の個性や本当に持っている能力を人的な環境が理解していないというようなことが言えると思いますので、障がい理解をしていない周りの人たちが逆に言うと障がいであるという風に捉えられると思います。

私たちはこのように構造的に理解するということを行っていて、ICF(国際生活機能分類)と言われているのですが、こういった視点で捉えていくとその人がより仕事に参加しやすくなるためには活動のレベルをどういう風に変えていくか。

例えば身体に障がいのある方であれば、活動レベルのところに支障が出るのであれば、在宅就労にすればその人が持っている能力を活かした働き方ができるのではないかという風に活動の領域を変換していくということになるでしょう。

発達障がいのある方であれば、コミュニケーションが苦手であれば文字化したりメールでやり取りをすることで仕事への参加促進ができるように捉えられると思います。この概念で考える障がいというのは「実はみんなが当てはまるのではないか?」と思うんですね。

誰しも大切にしていたい価値があって、それについて理解してもらえない状況がある。人によってはうまくバランスを取ったり人に合わせたりすることで社会に参加しているけれど、実は元々持っている個人因子はそれぞれ違うのでやり方は様々ある。

こうした相互作用というものの考え方について、1時間ほどかけて会社の事務の方や企業研修の中で話すことが多いです。

この概念について理解をしていくと「障がい」という言葉や「今まで障がい者の方と関わったことがないという過去」にとらわれず客観的な見方ができるようになり、障がいを持った人材について適材適所の配置ができることに繋がっていくのかなと思いました。

 

まとめ

簡単に今日のポイントをまとめますと、まずは障がい者雇用に取り組むために会社の方がおっしゃっていた言葉ですけども、まずは「経営戦略として取り組む」ということです。

CSRやSDGsやダイバーシティという言葉がありますが、そういったものを会社の戦略の中に上手く取り込みつつ、社内のキーパーソンを巻き込んで取り組みを進めていくことが重要になってきますというお話をしました。

結果的にはトップの強い意志です。会社のトップの方が障がい者雇用に取り組んでいくということが決まれば、現場との乖離があったとしても徐々に現場への理解を深めることができます。ここで揺るぎない意志を持つということが大切です。そしてジョブマッチングです。これは支援者から見てもそうですし、会社の方もこのことについては口を揃えておっしゃっています。

パートナーシップというのは1社で取り組むものではありません。色々な情報収集をしながら人の力を借りることもそうですし、他社の事例から学ぶということもあるでしょう。活用できるものはできるだけ活用しながら取り組んでいくべきです。

ありがちなのは障がいのある方の雇用担当者だけが全てを抱えてしまって1人で悩んでしまう。疲弊してしまうケースです。前者の取り組みにしていくためにはパートナーシップについて外部だけではなく内部でも、前向きの社員やキーパーソンを探しながら全体の取り組みにしていくことを意識する。それが障がい者雇用が上手く行くポイントです。それは結果的に業績の向上につながるポイントとなるはずです。

私からの情報提供は以上です。ご清聴ありがとうございました。

 

Q&A

本編の補足として、お二人に質疑応答を行っていただきました。

質問者:株式会社メンバーズギフテッド 取締役 石後岡 学 氏
回答者:特定非営利活動法人WEL’S 理事長 橋本 一豊 氏


■石後岡

「業務の切り出しをしっかり行う」ということを仰いましたが、例えば「週30時間で1人採用しますよ」といった場合に結構なボリュームの業務を作り出す必要があると思います。切り出した業務を任せられる人材かどうかは、実際に採用してからでないと分からないような部分もあると思いますが、その辺の見極めについてはどのようにお考えでしょうか?

■橋本

色々な方面の考え方があると思いますが「雇用率をクリアする」という部分を前提に考えますと週20時間以上という労働時間を満たすことが必要になりますので、その条件に当てはまる人材を探してマッチングさせていくということになると思います。

積み上げ形式で週20時間から30時間、その人に合わせて職務を切り出しつつ、徐々に時間を増やしていくということがより無駄のない理想的な切り出し方だと思います。

理想を言えば、週30時間以上の正社員としての業務切り出しができれば良いのですが、属人化的に仕事をされてきた中小企業ですとそこまでの切り出しはできないのが現状です。ですので何とか週20時間以上の業務切り出しを構築していく形です。

実際に雇用をしてその人の能力が分かっていくと「もしかしたら、この仕事もお願いできるかも」と周りの方も思ってくれるので、自然にそういう風になっていくと私自身の印象としてはあります。

■石後岡

20時間の仕事の切り出しも大事ですが、与えられた仕事のすべてがこなせるという前提で考えるのは難しいでしょうし、実際にやってみると「これじゃなかった」ということもあるかと思うのですが、ある程度の見込みはありつつも、状況に合わせて変化させていくというスタンスで良いのでしょうか?

■橋本

はい。実際の現場でもそのようにしています。

■石後岡

私の経験としましても、本人とのマッチングを図りながら上手く活躍できるように配慮してあげる方が良いのかなという風に思いますね。

もう1点質問なのですが「全体の取り組みにする」というお話が最後にありましたが、いくつかポイントがあるかと思いますが、どのような取り組みが効果的だったかお教えいただけますでしょうか?

■橋本

これはあくまで支援者目線として、トップの強い意思で障がい者雇用に前向きに取り組んでいる会社さんの場合ですが、そちらで研修をさせていただたんですね。その時に感動したのが参加してくださった社員さんから、全員分のメッセージが書き添えられたお礼文をいただいたことです。

「障がいについて理解が深まりました」
「実は私にも障がいがあります」
「障がいの有無に関係なく、誰にでも当てはまることではないかと思いました」
「特別扱いという考え方ではないということに気づきました」

というような意見をいただきまして「今までと違ったマインドが行動変容につながった瞬間だった」と社長さんも仰っていましたし、私自身も実感しました。お礼文をいただいたときに自然と涙がこぼれたことを覚えています。それが一番記憶に残っているエピソードですね。

全体に対してトップが意思を示すということや障がい者の方と関わり合いのあるシーンを作るということはすごく大事なことです。その際には新規に雇用された方と復職された方がいたんですね。そういう方を「会社全体で迎え入れる」という空気に変わりまして、今も3か月に1回程の頻度で訪問させていただいていますが、すごくいい雰囲気だなと思いました。

■石後岡

障がいを持たれた方が活躍することにつながってくる、いい事例だなと思います。本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきありがとうございました。


ご質問等がございましたら、お手数ですが下記運営事務局までご連絡のほどよろしくお願いいたします。
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