実践から学ぶ!リモートアジャイル開発のポイント
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新型コロナウイルス対策への必要性もあり、WFH(Work From Home:在宅勤務)含めたリモートでのアジャイル開発が今後ますます増えると予想されます。
しかし、アジャイル開発はこれまで「プロダクトオーナーもエンジニアも一か所に集まること」のメリットを活かして発展した経緯もあり、リモートでの成功例やノウハウは不足しがちでお困りの方も多いかと思います。
永和システムマネジメントのアジャイル開発拠点である、Agile Studio Fukui(ASF)では、長年リモートによるアジャイル開発を実施しており、アジャイルに限らず、リモートでうまくチーム開発を進めるためのノウハウを持っておられます。本セミナーではリモートアジャイル開発に関するノウハウをAgile Studio Fukui ディレクターの岡島さんにお話ししていただきます。
セミナー動画
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セミナーの内容(上記動画内容の一部抜粋)
リモートアジャイル開発の実践ノウハウ
まずはフォーメーションです。リモートには、リモートエンジニア、リモート拠点、全員リモートのパターンがあります。
実は、アジャイルスタジオ福井が完成したときは、リモート拠点だけを想定していました。東京にお客が多く、つながりを持つために持ち帰り開発のような体制を強いられていました。しかし、実際に始めると、さまざまなフォーメーションが期待されるようになってきました。
リモート拠点も含めて今日はノウハウを共有します。今みなさんは全員リモートかもしれませんが、まんべんなくご紹介していきます。特に社長と私が気に入っているものを中心に紹介していきます。
ノウハウ1:かたわらに写真
写真を身近において合えない人を身近に感じる方法です。ある日、現場でよく知らない人の写真を壁に貼って仕事をしている人がいました。誰だと聞いたら、お客さんだとの答えが返ってきました。
なかなかお客の写真をかたわらに置くのは珍しいと思います。恋人や家族というケースはあるのでしょうが、相当顧客愛が強いと思いました。
重要な顧客と会話できないシチュエーションだと、顧客が困っているイメージが湧かず、モチベーションがあがらないとのことです。写真によってイメージが湧きやすくなります。
また、面白い写真だとメンバー間で会話のネタにもなり、会話が弾むという効果もあります。
ノウハウ2:リーダーから無礼講
皆さまには、受託開発をしている方がいると思います。いかに顧客の垣根を取り払うかが肝心です。しかし、それはリモートでなくても難しいですよね。つまり、リモートだともっと難しいです。普段合わないと仲良くなれないので当然でしょう。
そこで、「~様」などの表現を使わないというアイデアがあります。リーダーやその役割を果たすメンバーが、「お世話になります」などの表現を使わないようにするのです。
「~さん」と呼び合える関係を作ることが大切です。リーダーが始めるとメンバーが打ち解けていい関係になってきます。
ただ、意識しないとできません。若いメンバーだと特に難しく、実施できないこともあります。しかし、そういうパターンを目指していきましょう。
ノウハウ3:リモートでもホワイトボード
ホワイトボードはアジャイル開発でもよく使いますが、リモートでも使った方がよいです。タブレットを使ってコミュニケーションする方法などがあります。ただし、道具が必要で意外と難しいので、会社が支援する必要があります。
使える道具はいろいろ使っていきましょう。実際現場で使っているところは、ホワイトボードがないと辛いということを聞きますので、会社でシェアしてほしいです。
最近、miroとかDiscordのサービスが流行っていると思います。グーグルドライブなどとは違って、miroは一面になんでも貼り付けられるバーチャルホワイトボードです。写真やバーンダウンチャートを貼り付けられます。
面白い点が、miroにはグーグルドローが埋め込まれているところです。スプレッドシートで計算式を使わずに手で書くのです。このようにするのは理由があります。あえてめんどくさいこと、つまり手で書くことを再現したいのです。
miroでは、もちろんスプレッドシートも埋め込めるのでそのまま見れます。付箋紙を貼り付けるなどすれば、いつも通りの振り返りをオンラインで簡単に再現できます。素敵なのが、無料でもけっこう使えるところです。
アジャイルチームがスムーズにリモートできた理由
ポイントは組織能力です。さまざまありますが、3点話します。組織能力には、ある程度訓練されたアジャイルマインドが必要で、お金では解決できないと思っています。
①パターンとしてイケてる働き方を共有できる
ここまでリモートのノウハウ集などを紹介しましたが、それらはアジャイルスタジオ福井にいる有志一同の協力によって成り立っていて、私は編集しただけです。リーダーがノウハウを与えたわけではなく、みんながイケてると思った働き方を見出してくれました。
このように、見出して共有することが大切です。そして、パターンを配布するだけでなく、追加して議論するのが大事です。我々はそれができたからこそ、この危機に対応できたと自負しています。
②個人と組織の共生進化を良しとする文化
私はしばらく会社にいっていません。その中で、リモートアジャイル開発の階層が解体されていくのを感じています。たとえば、顧客との関わりなどです。
リモートのアジャイルによって、仕事の指揮系統に変更はないけれど、1人で仕事している感覚があり、階層という意識が下がっています。
自分の生活リズムに仕事が組み込まれる感覚や、私生活と仕事がシームレスに繋がる感覚が生じつつあります。また、アジャイルではチームワークが要なので、さみしい感覚も生じることもあるでしょう。
私に関しては、社内の打ち合わせや、顧客との接点が意外と増えていると感じます。というのも、コミュニティーが活発化し、チャットの機会などが増えているように思えるからです。
企業にいる私ではない私について考え、哲学者気分になることもあります。そうなると自分と組織、会社の関係はどうあるべきかなどの考えにまで至ってきます。私はそうですが、他のメンバーもそうかもしれません。
個人と自分の関係をあらためて考える機会になっています。組織が人を育てると、もちろん私もそう思いますが、個人と組織がともに進化するという感覚に変わってきています。
③ビジョンの実体としてのアジャイル拠点
アジャイルスタジオ福井のビジョン、つまり社長のビジョンは、共創を目的とした拠点を作ることにあります。
従来は、システム開発事業会社がいて、ベンダーが納品するというように、かっちりわかれた体制でした。アメリカと違って日本ではうまくいかない可能性がありましたが、社長はアジャイルを推進するために、パートナーと協力・開発をすることを目指しました。ベンダーとユーザーが一緒に開発できる場所を作りたいと考えたのです。
ちなみに、共創アジャイル拠点はうちだけではありません。KDDIデジタルゲートがよい例でしょう。素晴らしい場所ですが、現在は残念ながら閉じています。しかし、ソフトウェアを使ってバーチャルでワークショップをやろうとしています。デジタルゲートのビジョンは健在です。バーチャルの立場を忘れていない点が面白いです。
私たちも同様で、現場にいけなくても、リモート見学によってビジョンを広めていきたいと思っています。実態をともなう拠点から生まれたビジョンは大きく、人を集めます。文化を生み出すパワーはすごいです。
社員たちは拠点で働くうちにパターンを発見し、ビジョンを体感していきました。社長や私の思いがわかってきて、共創することの意味を理解していったようです。素晴らしい拠点にいると、さまざまな発想も生まれてきます。このような拠点を作ってもらったありがたみがわかります。
新型コロナで共創アジャイル拠点はどう変わるか?
さらに分散して全員がリモートになるでしょう。ユーザーは積極的に関与し、内製環境にシフトしていきます。ベンダー間の情報共有も進展します。
今日のデジタルセミナーも良い例です。コロナ禍において、今回のような関係が発展し、一緒に共創しませんか?という状況になりやすいのです。
共生進化は個人と組織だけではありません。永和システムと顧客の関係でも共生のパターンは生まれつつあります。
顧客という細胞の中でベンダーというミトコンドリアが活性化していくイメージです。ともに成長できればと思いますので、リモート見学をお待ちしております。
本ウェビナーの内容は、こちらの記事でもより詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。
登壇者紹介
岡島 幸男 氏
株式会社永和システムマネジメント
Agile Studio Fukui ディレクター
金融機関向けの情報系システム開発、Web開発のアーキテクト、組込開発のマネジメントの経験を経て、現在はAgile Studio Fukuiにて、クラウド+アジャイルによる受託開発・教育事業を担当。
著書に『ソフトウェア開発を成功させるチームビルディング』(ソフトバンククリエイティブ)。『受託開発の極意―変化はあなたから始まる。現場から学ぶ実践手法』(技術評論社)他。
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