VUCA時代、コロナ禍の現代において、新規事業・サービス開発を行うことが必須となっている昨今では、新規事業開発の推進が重要な1つの成功要因となりえます。そして、中~大規模企業において新規事業開発を推進する方法の1つがステージゲート方式です。
UXデザインに特化したリクルートグループのWeb制作会社である株式会社ニジボックスの小芦氏に、同社のグループ企業、他クライアント様で推進しているステージゲート方式の事業開発実績を基に、ステージゲート方式のメリットと、それに則したMVP(Minimum Viable Product)を開発手法について2020年10月8日に開催されたセミナーにて紹介いただきました。


登壇者紹介

小芦 東希雄 氏
株式会社ニジボックス セールス/プロデューサー

リクルートのインキュベーション部⾨Media Technology Lab.(次世代現事業開発室)から生まれた、株式会社ニジボックスに参画。複数の大手代理店、リクルートグループを対象に、WEB制作、UXデザイン領域の商品企画、販促、セールスに従事。その後は、主に新規事業開発の伴走を中心にプロデュース業務を行う。その過程で、新規事業開発支援に特化したソリューション等の開発も行う。現在は社内ソリューションのパッケージ化、営業プロセスの改善、新規顧客課題に向けた商材の開発に注力しながら、新規事業開発を推進するお客様の課題解決に向けたプロデュース業務を行っている。


はじめに

本日は「ステージゲート方式に則したWEBプロダクト特化型MVP検証とUXデザイン」についてお話の方をさせていただきます。

まず私の自己紹介をさせていただければと思います。

リクルートグループのニジボックスにJoinをしまして、最初は主にセールスの仕事をしておりました。最近は培った経験を基にプロデューサーとして新規事業開発やUXデザインコンサルティングの支援をさせていただいております。

まず簡単に弊社のご紹介をさせていただきます。

弊社ニジボックスはリクルートのインキュベーション部門の次世代事業開発室(以前の名前はメディアテクノロジーラボ)から独立をしまして、UXデザイン事業を主軸にデザインファーム的なポジションで活動をさせていただいております。「ビジネスの創造と成功にコミットする」というミッションを掲げて事業を推進しております。

立ち上げ以降はリクルート新規事業制度のRingの伴走から始まりまして、今日まで複数の事業・サービス・プロダクトの立ち上げと成長について担ってきました。

本日は以下の3件

「顧客のニーズを汲み取りきれない」
「新規事業開発のノウハウがない」
「人材確保や育成に困っている」

に加えまして、UXデザインMVP開発の手法がわからないという課題を持たれている方に私の情報がご提供できればと思っております。

 

新規事業開発の必要性

それでは早速本編の方に入ります。

そもそも「なぜ各企業が新規事業開発に取り込まないといけないのか」という点ですが、私が思うにこのような課題が背景としてあるかなという風に思っております。

「VUCAへの突入」であったりですとか、
よく言われてるのが「プロダクトライフサイクルの短期化」ですね。

日本の市場が縮小しているということで、今までのようなシェア争いという概念ではもう戦っていけないという時代に突入しているのではないかなと考えております。そして結果として企業と企業人は事業を生み出す力やプロデュース能力というものがこのニューノーマルな時代に求められるのではないかと考えています。

 

「常に冷静さを保てる仕組みづくり」と「情熱を持った実行力」

今回のセミナーでお伝えしたい結論を先にお見せします。

私の持論にはなってくるのですが、新規事業で必要なことと言うのは、

「常に冷静さを保てる仕組みづくり」
「情熱を持った実行力」だと考えております。

今回のセミナーではその仕組みというものがステージゲートであり、実行力がMVP開発UXを意識したフィジビリの推進手法という形で説明させていただきます。

少し前提のお話になりますが、そもそも新規事業立ち上げの種類はどういったものがあるかご存じでしょうか。

大体は3つに分類できるかなというふうに考えておりまして、

・イントレプレナーシステム
・オープンイノベーション
・コーポレートベンチャーキャピタル
です。

今回はその中でイントレプレナーシステム、社内起業家を自社内で輩出する仕組みについて注力的にまずお話をさせていただきます。

 

「イントレプレナーシステム」のメリットについて

イントレプレナーシステムなんですけれども、先ほどの新規事業立ち上げの手法の中でもいくつか利点がございまして、そちらの方についてご説明します。

1つ目は社内アセットの利活用ができるという点があります。
2つ目が低リスクであるという点です。

ただ一方でローリターンなのかハイリターンなのかというところは行う事業によって異なってくると思います。

3つ目が社内の育成・成長にコミットできるという点です。

最後にこれらのプロセスで得た資産がすべて既存事業へ還元できて、このサイクルを回し続けられるということがイントレプレナーシステムの全体的なメリットではないかと考えております。

 

「イントレプレナーシステム」の採用実例

イントレプレナーシステムを推進している企業でいくつか特徴的な取り組みをして成功している事例をご紹介します。

3M社は「イノベーション文化を確立させるために、通常業務外で15パーセントの時間を事業創造に充ててよい」という施策を講じられています。

CEWE社はインセンティブ制度ではなく、事業開発チャンスを生み出せる優秀な企画提案を行った社員に対してボーナスを支給、また経営トップ層へのプレゼン機会が与えられる制度を導入されています。

エボニック社に関しては既存事業や従業員からのやっかみなどから新規事業チームの参画者を守るために、独立した施設を作って業務に専念させています。このような従業員の立場に立った取り組みが成功のためのファクターとなっていると考えられます。

 

「ステージゲート」について

それでは次にステージゲートについてお話の方をさせていただきます。

「ステージゲートとは何か?」ということですが「事業開発における意思決定の枠組みを作る推進手法」という風に弊社は捉えております。

分かりやすく言いますと、トンネルをイメージしていただけると分かりやすいのですが、車や電車がトンネルを通るために、事故防止の意味でトンネル内の電灯や看板などたくさんの設備が必要かなと思います。

実際のビジネスの新規事業を推進するステージゲートも全く同じです。「実際に参加する人たちがうまくトンネルを抜けられるように企業が設備を準備してあげる」ということになります。

これがその一例です。

弊社が一般化したステージゲートの内容ですが、上段がステージです。主にどういうフェーズなのかを記載しておりまして、その下の段に通過/EXIT判定基準を明示しております。通貨基準を満たすアウトプットと思考のフレームを記載しております。

このようにステージが進むごとに必要なコストと人材を投資していき、リスクを下げながら、成功率を徐々に上げていくというシステムになっております。

 

ステージゲートのメリットについて

次に「ステージゲートのメリットは何なのか」ということについてお話ししますが、それは以下の3点です。

①「制度を活用して新規事業の成功確率を高めることができる」
②「仕組みをブラッシュアップすることで成功確率を高めることができる」
③「社内の新規事業開発で陥りがちな問題を網羅的に解決できる」

時間の関係もありますので、ステージゲートのステップ別に今回は「運営者側の視点」と「現場担当者側の視点」の2軸で意識すべきポイントについてお伝えします。

Stage0、いわゆるアイデア創出の段階です。

ここで抜粋してお伝えしたいのは

運営者は「事前にガイドラインを作っておくこと」
現場担当者は「何の問題を解決するのか見極めること」
の2点です。

「意思決定のガイドラインを作るにはどうすればいいのか」というポイントです。よく新規事業の支援を伴走させていただく際に思うのが、少し言葉を選ばずに言うと「あまり役に立たないフィードバックを返す場面に遭遇するケースが多い」ことですね。

あまりにもざっくばらんなフィードバック過ぎて、現場担当者の目線から見るとそのフィードバックを次回、あるいは来年度の新規事業の応募のときに生かそうとしても生かしきれないようなケースに遭遇することが多かったです。

理由としましては、このような意思決定のガイドラインが決まっていないケースが多く、実際の運営者や決済者が感じたことをざっくばらんにフィードバックしてしまうことが1つ要因としてあると思います。理想を言えば、判断される方の過去の経歴とか強みから判断することを固定して評価することがベターかなと思っております。

ここで注意が必要なのが、ガイドラインが絶対ではないということです。新規事業の正解を知っている人なんていませんので、あくまで効率化をするために使うものとご理解していただいて、柔軟な発想を持っていただく必要はあるかなと思います。

よく「撤退ラインを設けるべきか?」という質問をいただくケースが多いんですけれども、回答としては絶対に設けた方がいいかなと思っております。理由としてはずるずると事業を続けてしまう余計なコスト投下を避けるという意味もありますが「新規事業において無駄な投資コストが発生しない」というバイアスがかかるということが、イコールで新規事業創出をする際に推進の許可出しを踏みとどまってしまうようなマイナスの感情をなくすことに繋がってきますので、そういった観点でも設けた方が良いのではないかと思います。

ここで「何をもって新規事業とするのか」ということについても少し触れておきたいなと思っております。

皆さんもご存知かもしれませんけれども、アンゾフの成長マトリクスというフレームワークがありまして、新規事業の捉え方にも2パターンあることが分かってきます。

 

「アンゾフの成長マトリクス」とは?

具体的にどういうことかと言いますと、弊社のグループの事業で例えるとこのような感じになってきまして、いわゆるSUUMOという既存事業がある中で、このアセットを新規の市場に投下する場合、例えばゼクシイなどになってきますが、それが1つ新規事業として呼ばれるものに該当してきます。

SUUMOをデジタル化して、新しいプロダクトに生まれ変わらせましょうということも新規事業になってきます。いわゆる飛び地と呼ばれるような新規事業+新規製品のものは、右下のR&D領域が該当してくるかなと思います。

難易度ですと飛び地であるR&Dの部分が一番難しくて、新規事業制度の熟練度や従業員のスキルセットなどを考慮して、例えば初年度はゼクシイをフォーカスした新規事業にすべきなのかどうか、数年重ねたステージゲートの場合ですと対象とするべきものを全方位に広げていくという形にしていくなど、あり方は定義していった方がいいかもしれません。

このように会社として何を新規事業とするか決めておかないと、実際に判断を迫られた際に明確にどれがいいか選ぶことが難しくなってきます。

下手をすると

「思っていた事業案が出てこない」
「アイデアがまばらすぎてどれがいいのか分からない」
といったありきたりなケースに繋がってきます。

 

事業とは「不を解決するもの」である

次に現場担当者にご理解いただきたいのが「事業とは不を解決するものである」ということです。不はJobと言い換えることもできますが、事業を生み出すにはどういった不を解決するか見極めることが重要になってきます。

ただ。いきなりどういう不を解決すればいいのか考えるのは非常に難しいです。

よく私もビジネスコンテストに参加させていただく際に「ざっくばらんに何でもいいですよ」というお題を出されるのが一番やり辛くて、その時によく行っているのが自分の身の回りの不を探ることから始めたりしています。

私がよく活用しているのがこのようなマンダラートです。

自分や身近な人に目線を置きまして「どういう課題がありそうなのか」を考えています。何かしらお題をロックして進めた方が不が出やすいかなと思います。

そして解決したい不が見つかれば、それを解決するアイデアが生まれると思います。そのアイデアの理想の形が見えてきて、そのアイデアを叶えるためにはいくつかの壁が出てきます。その壁をビジネスモデルや技術で打ち破るということが一般的に言われているイノベーションです。

よく言われているのが今の新規事業はほぼ組み合わせでできていると考えられておりまして、顧客の不と数種類のビジネスモデルと解決方法もしくは技術の組み合わせで成り立たせることができます。

例えばネスレやフィリップのアドオンビジネスは当時画期的だったと感じておりまして、私は髭剃りの替え刃が高すぎだなと思っていたんですが、あれは本体価格を安くして替え刃で収益を上げるモデルになっています。別の例ですとマイクロソフトのサブスクリプションです。導入された頃はユーザー側もあまりピンと来ないようなビジネスに思えたのですが、私は今ではサブスクリプションでOfficeのサービスを利用しています。

次にStage1 「アイデアを事業アイデアに成長させるステップ」になってきます。

ここでは特に市場・潮流・自社相性ですね。見極めることにフォーカスしてご説明していきたいと思っています。

よく弊社グループの新規事業制度においては「そのビジネスアイデアが100億事業になるのか」をよく問われるんですけれども、これは重要な指標だなと思っておりまして、それを計るために3つの要素から考えるのが分かりやすいかなと思っています。

1つが「広さ」
1つが「頻度」
1つが「深さ」

です。これは3つの掛け合わせで市場規模を算出することができるという風に思っておりまして、こういったところを参考にしてみてください。

例えば弊社のグループ事業に当てはめますと、これらが主に該当する要素かなと考えております。

住宅や就職の領域について考えたときに、広さは一部に限られ、頻度もそれほど多くありませんが、住宅購入ですとか就職の失敗というものは人生を左右しますので深さの度合いはかなり大きくなってきます。中古車や宿泊先探しに関しては、広さと頻度は多くはなってきますが、深さに関しては先ほどと比べるとそこまで深くはありません。

美容・飲食に関しては更に広さと頻度が増えてくるんですけれども、深さに関してはもっと浅くなってきます。このように考えると、市場規模のイメージがつきやすくなってくるのではないかなと思います。

補足として、潮流や自社との相性を考えることも重要ですね。

新規事業が社風にそぐわないということが大きな障壁になったりします。

①商売特性は営業スタイルや商売取引単位や事業評価のタイムスパンなどが該当します。
②行動様式は時間感覚やホスピタリティや品質管理が該当します。
③価値観ではどういう風に既存事業を評価しているのかということが該当します。

こういった考え方が検討中の新規事業と合ってくると、障壁が少なくなってアセットも活かしやすくなっていくのではないかと思います。

 

事業を成功させるために必要な3つの力

Stage2はビジネスアイデアを検証して確からしさを見極めていくフェーズです。ここで重要なのがMVPの概念になってきますので、後ほどご説明をいたします。

Stage3は実際のビジネス計画を立てていく開発計画です。ここでは運営者・現場担当者共に大切なチーム作りに関して触れておきたいと思います。

弊社の元代表によると事業を成功させるために必要なチーム作りには

Network力
Execution力
Knowledge力

の3つがあると言っています。

各ステージゲートのフェーズごとにどの人材に厚みを持たせていくべきか、増やすべきかについてはビジネスアイデアによって検討していくのがベターかなと思います。

参考までに触れておきますが、この部分の人材への投資コストを惜しむことは避けた方が良いと考えております。人材のパフォーマンスについてはバカにできませんし、むしろそれが成功さえするという風に考えて良いと思っております。

「Network力」ですと有名コンサルティングファームの通常では持ち得ない人脈を活用すべきですし、「Execution力」の場合は我々であったり、今回お声がけをいただいたメンバーズ様のような事業マネジメントであったりですとか、プロダクト開発の遂行能力が必要になってきます。「Knowledge力」ですと有名な例としてはビザスク社が該当すると思うのですが、こういった所は必要に応じてガシガシと投資をしていくべきと思っております。

 

MVP(Minimum Viable Product)開発について

ここからはMVPについてご説明させていただきます。

弊社は基本としてWebプロダクトの開発しかしておりません。今回Webプロダクトに重点を置いてお話をさせていただきますが、一部オフライン事業でも応用できるポイントがあると思いますので、ぜひ参考にしていただければと思っております。

Stage2のフィジビリ検証において、重要な点に関してはこの2点になってくるかなと考えております。とにかく「ファクトを集めること」「検証を繰り返すこと」が肝となってきます。

その上で重要なことがMVPになってきます。MVPはミニマム・バイアブル・プロダクトの略なんですけれども「必要最小限の提供価値を持ったプロダクトの定義」になります。

例えば車を作ろうという場合に最初から車の完成品を作ることを目指すと、途中で何か大きな問題が発生しても、車が完成するまで突き進まざるを得ないような状況になります。結果としては思ったような車ができずに無駄な投資になります。MVPはそういった無駄な投資をしないようにする考え方です。

 

「LEAN UX」とは何か?

MVPを活用した検証の考え方にはLEAN UXというものがあります。

このリーンスタートアップの思想とコンセプト+UXデザインの思想を組み合わせた概念においてMVPに必要なポイントは下記の2つです。

①スピーディーな立ち上げとPDCA検証サイクルの徹底
②ユーザーエクスペリエンスのドメイン強化と深化

まずスピーディーな立ち上げとPDCA検証サイクルの徹底という観点で見ますが、そもそもの前提として新規事業の初期構想においてそのまま進めて成功する確率は非常に低くて1%程度と言われています。だからこそ事業をピボットしながら進めて繰り返していくことが大事になってきます。

新規事業開発の成功イメージについて、一次関数的なグラフのようなものを思い浮かべる方がいらっしゃると思います。実際には0を起点として蛇行しながらゴールへたどり着くのが新規事業開発でして、検証するKPIと必要最低限の提供価値というものを定義し、何度も検証することが重要です。

例えば、実際の検証するべきKPIについてどのくらい初期に会員登録が見込めるかということを考える場合は、会員登録サイトがミニマムで必要になってきますし、そもそも一番初期の初期としてサービスのコンセプトを検証したいということなのであれば、サービスコンセプトが分かる動画をYoutubeにアップしたり、4コマ漫画を作成してユーザーにヒアリングをしてコンセプトが伝わるか検証するという方法も考えられると思います。

一説には「検証は300回繰り返さないといけない」という話もあったりもしますが、そう考えると果てしない作業にも思えます。実際それくらい重要なものだと認識していただければと思います。

 

目に見えるものこそが真実なのである

お伝えしたいこととしましては、目に見えるものこそが真実なのであるということです。

誰かが色々とビジネスの仮説を言って来たりですとか、イチャモンをつけてきたりするケースも現場の皆様はあると思いますし、実際に我々と同じようなことをされている方ですとクライアントがそのようなことを言ってくるケースというのはあると思います。

現場担当の我々がすべきことというのは、それらについて「ファクトでイチャモンを断ち切って道を切り開いていくこと」にあると思っていますので、ファクトを収集してそれらの仮説から導くということがクライアントないしは判断させる人たちに正しい事業判断をさせることにつながるのだという風に常日頃考えています。

もう1つ重要なこととしましては、今のサービスはスマホを起点にしたタッチポイント(ほぼオンライン上でのコミュニケーションが完結する)というケースが多くて、サービスの差別化が容易ではないということが挙げられます。

したがって後発に負けないUXを極めていくことが重要で、MVPの検証段階でもそれを意識して進めていくべきです。UXの要因にはそのサービスを利用してみたいと思うモチベーションとそのサービスを理解できるアビリティという二軸があります。

皆さんが知っている個人配車サービスがあると思いますが、こういった形でこの2軸を意識して差別化を図っていくユーザーエクスペリエンスのドメインを強化・進化していくということが必要になってきます。

 

MVPにおける6つのパターン

参考までにMVPの大枠6パターンについてもご紹介させていただきます。

実際にはこのフェーズの1から6を個別に行うこともあるのですが、徐々に事業が進んでいくと、これらのフェーズを組み合わせながらMVPを作っていくというケースが多いです。例えばコンシェルジュとオンリービジュアルを組み合わせて簡易的な体験サービスを作ったり、実際にユーザーが登録情報を登録できるようなサービスの遷移画面を作っておきつつ、裏側では人力で記載内容をExcelに流し込んで管理していくというようなやり方もありますが、ユーザーには裏側は見えませんので今の事業ベースや投信金額においてどこまでMVPとしてやっていくのかはしっかりと先ほどお伝えしたKPIと照らし合わせて検討していくべきです。

 

ニジボックスが重要視しているMVPのポイント

ここで少し、弊社ニジボックスが気をつけているMVPの部分についてご説明をしていきます。

先ほどお伝えした通り、検証の回数が事業成功のための生命線ですので、弊社は部分的な機能リリースでの連続的な検証というものを行うことにしています。

一般的にはMVPの内容を理解しつつも矛盾した方向性に進み、そこからエンハンスをしていくクライアント様が多かったりもするのですが、実際に我々が行う場合はそうではなくて、部分的な機能を開発しながら検証をして、それを繰り返していき、ある程度確約が持てた段階でサービスをローンチします。そこから連続的な機能リリースでエンハンスをしていく流れを取っております。


【※MVPに関して興味を持たれた方へ】

過去に株式会社ニジボックス エンジニアマネージャーの藤原裕司様が
「事業開発におけるMVPの考え方」というタイトルでご登壇されていますので、
こちらの記事リンクからご参照ください。
https://content.members.co.jp/?column=agile20200805


もう1点、よく見落とされがちなのですが、MVPは拡張性を見越して進めていかなければなりません。図に記載の通り0→1フェーズは1→10フェーズを踏まえた機能レベル設計が重要と書かれていますが、機能レベルが停滞しないように初期段階では本来必要のない機能も作っておく必要があります。

実際に事業を推進するにあたって、分析をしながら事業の方向性を決めていく必要があったりますが、往々にして初期の分析機能を設けていないケースがあります。そういった情報収集機能を最初に作っておかないと、今後目指していく機能に到達しないというようなケースがありますので意識して作っておくべきかなと考えております。

まとめ

まとめになりますが、新規事業とは冷静さと情熱のかけ合わせが重要だと考えております。それぞれを創出するためにも仕組み作りMVP作り検証の実行力が必要になってきます。

最後に弊社グループが過去に掲げていた、私がお気に入りのフレーズがありますのでご紹介します。

「格好良い大風呂敷と地味な一歩」
「Bet On Passion」

地味な一歩を踏み出させるのは、ある種仕組みがあるからこそ踏み出せるもので、パッションを極限までベットするという思想があったから、弊社グループ事業が今日発展することができているという風に感じております。

ぜひこういったノウハウや考え方というものにみなさんに還元できるようにしていきたいと思いますので、お困りのことがあればぜひご相談ください。

お知らせ

弊社小ロットから今回のような支援ができるようにさせていただいておりまして、

よく「UXデザインは高いのではないか?」という風に言われてはいますが、弊社はミニマム30万円からご相談に乗れるソリューションを準備しておりますので、もし今回のようなご課題であったりですとか、何か問い合わせがありましたらお気軽に言っていただければと思います。

※ご紹介サービス「NIJIBOX CDD」はこちらからご覧いただけます。

また本日のセミナーの一式を提供するようなパッケージもございますので、ご相談があればお気軽にお問い合わせをいただければと思います。本日はありがとうございました。

 

Q&A

質問者:株式会社メンバーズ メンバーズエッジカンパニー ディレクター 長戸佑介
回答者:株式会社ニジボックス プロデューサー 小芦東希雄 氏

1.セミナー本編にてステージゲートについてご説明いただきましたが、ステージゲートをお勧めしない事業領域などがありましたら、教えてください。

小芦

ステージゲートをお勧めしない事業領域は、プロダクトライフサイクルが長くなるものに関しては取りやめた方がいいかもしれないですね。例えば医薬品の開発などといった類の新規事業は研究開発やリリース、顧客に届くまでに膨大な時間がかかると思いますので、各ステージごとで成果というものを決めながらそれを判断していくという風に考えていくと、途中で士気が下がってしまいステージデートには適さない感じになってきますね。

長戸

「長期的な視点で取り組むような開発に関しては向かない」ということですね。

2.「管理する側ではガイドラインの作成が大事」とのことでしたが、新基準は不確実な部分も多く、基準を作るのが非常に難しいと思います。何か作成にあたってコツや気をつけるべき点があれば教えてください。

小芦

判断ポイントとしては皆様が取り組まれている既存領域において、事業を伸ばしていくかどうか色々と判断されていると思うんですけれども、そこと大きな差はありません。

ひとつポイントとしてはガイドラインは

「判断する側」
「実際に参加する従業員」

の2軸があり、両方の観点で見ていくべきだと思っております。

考えるべき個所は

「どれくらいの市場性があるのか」
「参加する従業員のパッションがどれぐらいあるのか」
「コンセプトがしっかりしているのか」
「既存事業とシナジー性があるのか」
「投資の回収がどれぐらいの期間でできるのか」
「計画として上がってきたものが正しく判断できるものなのか」

などといった所でしょうか。

それらに加えまして、従業員側へはどういう領域を今回新規事業という風に仮定して応募してもらうのか、そういったところは両方を意識しながら作っていくというのがコツかなと思っています。

基本的にはこう緩やかな運用をして常にブラッシュアップをかけていくスタイルが好ましいのですが、初期の方からガッツリと作りたいという話なのでしたら、あたりを主戦場とされているようなコンサルティングの企業様とかスタートアップを何社もされている起業家の方に支援していただくという方法があるかなと思います。

長戸

4コマ漫画を使って新規事業のイメージを作るという手法を以前登壇された藤原さんのセミナーでお聞きしました。

ガイドラインという言葉の意味を考えると非常に固いイメージがあって、まず収益性ありきで話を進めていかないといけないようなプレッシャーを感じるのですが、そもそも「本当にこのサービスがユーザーに合っているのか」ということを考えるために漫画を活用する方法はすごく分かりやすくて良いなと思っております。

小芦

そうですね。現場から出す事業アイデアのプランとしてそういった内容を盛り込んでいくと分かりやすくなると思います。

ガイドラインも大事だと言いましたが、経営者・判断者・現場の人々が密にコミュニケーションを取るということも重要な要素です。実際に見ていると、発表する機会でしかコミュニケーションを取っていないというようなケースは普通にありまして、そんな状況ですと良いものは作れないのではないかと思います。ですので、そういった指揮を執りながら進めるといいのかなと思います。

3.フェーズMVPレベルとKPIを含めた具体的な事例があれば教えていただきたいです。

小芦

先ほども何度か口頭でお伝えしたんですけれども、例えば初期のサービスコンセプトを検証するという話の場合ですと、ペーパープロトタイプとして紙で書いた4コマ漫画のようなものを使って「こういう事業アイデアですがご興味はありますか?」というような内容で定性の中で10人に聞いて1人でもそういうサービスを使いたいという人がいればOKとするといった具合ですね。

10人中1人というのは、それくらいの割合でサービスに振り向いてくれる人がいれば、サービスとして成り立つという仮説があったりもします。そういった所をKPIを作って検証していくとか、あとは実際に事業を進めていくにあたっての初期のKPIとして登録者3000人をローンチ前から囲い込まないとこのサービスはある種成功しないというようなものをKPIで作った場合は、本当に簡易登録だけのLPだけを作ってリリースして、3000人が認知できるような50~100万くらいの広告費をかけて、どれくらい登録数が上がるかというところもあったりします。

その他の例として決済系のサービスなどが入っているようなサービスだとすると、実際のユーザビリティを検証するためにある程度動かせるプロトタイプを作りながら、決済周りのMVPに関しては裏側でExcelを叩いて入力するだけといったパターンですね。

これは一例でして、他にも様々なイメージのものがあります。詳細については弊社の藤原が紹介しておりますので、そちらをご覧になっていただければと思います。

4.作り手としては、アーリーアダプターの温度感(お金を払うほど使いたいかなど)を定性的に実感できると思うのですが、社内マネジメントの良し悪しを共有する上で効果的な指標や方法などがあれば教えていただきたいです

小芦

確かに難しいポイントかなと思いますが、1つマネジメントとしてあるのは、継続的なモチベーションを発生させないといけないというところはあったりしますので、コンセプトを明確にすることですね。

自分が実現したいことについて情熱を持って伝えることも大事ですが、ロジカルに話すことも重要です。コンセプトを定めていないと、長文でダラダラと書いたり、横文字も多くなり

「何だこれ?」
「伝わらないな」
という風に受け手が思ってしまいます。

伝えたいことが一文だけで書かれていて、それを読むだけで内容がスッと入ってくるような状況ですと、自分の思いやビジョンがしっかりコンセプトとしてロジカルに落とし込めているという一つの判断軸になってきます。

5.目に見えるファクトで黙らせるのはKPI検証で重要だと強く共感しております。ニジボックスさんのフィジビリティの範囲で経営側を黙らせた事例があれば教えてください。

小芦

もしプロダクトの中で「ここを改善すればいいと思っているのに判断が出ない」というような場合は定性情報にも定量の情報を加えて実行するということはあります。

例えば10人に定性調査を行った際にパターンとして少し抽象化をさせてあげて、10人の中でも5人以上は課題だと思っているという話に引き上げていって、これを改善することでインパクトが出るという話は1つあるのかなと思います。

長戸

定性で調査をして定量できちんと示しながらどちらからもアプローチをしていくと、経営者層としてはちょっとこう考えるというか向き合うということですよね。

6.「必要な最小限の価値」とは何を評価軸に判断されていますか?

長戸

最小限過ぎてまったく見向きもされない場合もあるでしょうし、予算やスケジュールの制限もある中で必要な最小限の商品の価値というものについて、どうお考えですか?ということですが。

小芦

これは一律で判断するのがどうしても難しいので、先ほどお伝えした実行力のある会社さんなどと連携するのがいいのかなという風に思いますが、やはり事業アイデアに対してどこを最優先に検証すべきなのかということですね。

例えばサブスクリプションのモデルですと継続率や有料課金転換率などが重要になってきたりすると思いますが、キーサクセスファクターとして何があるのかということをKPIツリー的に落としていきながら一番ミニマムのところがまず何なのかを洗い出してひとつずつ検証していくというのが一般的に分かりやすいやり方かなと思います。

長戸

「困ったらニジボックスさんに声をかけてください」ということですね。

7.連続的に検証をされているとのことでしたが、具体的な話として検証される回数の幅はどれくらいありますか?

長戸

回数なのか。回数によって金額が変わるのか。それとも初期の金額を設定して金額を決めていたりするのか。「規模ごとにもやり方が違うのかな?」という意味の質問だと思います。

小芦

理想を言えばミニマムは各フェーズごとで1回は検証をかけたいなと思います。検証のボリュームとしては定量的なアンケート+定性的なインタビューを最低5名から10名くらいは行いたいです。

理想論で行くとミニマムはこれくらいはやった方がいいという話ですが、実際問題クライアント様にとっても予算であったりスケジュールであったり、例えば「今年度の間にどうしてもリリースしなければいけない」などという制約はあると思いますので、その時は状況に応じて適切なプランをこちらから提案させていただくケースが多いですね。どうしても難しいということであれば、ミニマムのインタビューで収めることもあります。

ある程度仮説が多くなってきてしまいますので、こういったケースはどれだけインタビューの回数を増やせるかが失敗率の減少に繋がっていきます。やればやるだけいいということですね。

長戸

それはMVPのメリットでもありますよね。それを細かくフェーズ切りをして「予算の中でどれが最適か」ということを結論とすり合わせながら作っていくということですね。

小芦

初級金額設定については特にこれというものはありませんが、だいたい200万から300万くらいが外部に発注する場合にかかるコストですね。切り分けとして内部のクライアント様の方でいくつかの部分を担当していただけるともう少し金額を下げることは可能であるとは思います。

大企業さんの場合に多いのが「もう検証でいいからとりあえず3ヶ月で作りたい」というお客様もいらっしゃったりしますので、3カ月で一気にまとめてヒアリングして、一気にお金もかけてという、あまりやりたくはありませんがそういったこともありました。

長戸

そこに気持ちが入ってないというか「本当にやりたいのかな?」と疑問に思うところはちょっと問題ですよね。

小芦

もちろん私も最初に頭でっかちで考えて考えてリリースするというのはあまりお勧めしていません。すぐ作ってリリースをして検証した方がいいと思いますが、その規模感に驚く場合があります。

長戸

そこはケースバイケースと言いますか、意思があるとお互い上手くいくということですね。「何とかこの部分まではこんな感じで進めたい」という考えがあると、我々も具体的な提案ができるんじゃないかと思いますね。

小芦

そうですね。もちろん「勝利の方程式」のようなものがあるかといえば、そんなものは多分存在しませんので、限定された費用・予算というところでうまくアジャストしながら、解決策をご提案させていただいております。


ご質問等がございましたら、お手数ですが下記運営事務局までご連絡のほどよろしくお願いいたします。
メールアドレス:m_lg@members.co.jp